ラーンが石の破片を蹴飛ばすと、イシェから「うるさい」と一喝された。いつも通りの光景だ。ビレーの朝の空気は澄んでいて、遠くの山々に朝日が差し込む。だが、二人の顔にはいつもの活気がない。
「今日はなんだかんだで疲れたなぁ」ラーンがため息をついた。「あの遺跡、罠ばっかりでな」
イシェは小さく頷く。昨日の遺跡探索は散々だった。期待した古代の宝物は見つからず、代わりに仕掛けられた罠に何度も苦しめられた。ラーンの豪快な剣技とイシェの機転がなければ、二人はもうこの場所にいないはずだ。
「テルヘルはどうするんだ？」イシェが尋ねた。「あの遺跡は危険すぎるんじゃないか」
ラーンは鼻歌を口ずさみながら考え込んだ。テルヘルの目的はヴォルダンへの復讐だった。そのために彼女は遺跡の謎を解き明かそうとしているのだ。だが、その手段は時に非道であり、ラーンとイシェを巻き込むことも多い。
「あいつは怖いもの知らずだ」ラーンは呟いた。「でも、あの目つきを見る限り、今回は本気っぽいぞ。何か大物を見つけたみたいだ」
イシェは眉間に皺を寄せた。「大物って？」
「 dunno. だが、テルヘルがそんな顔をしているなら、何かあるに違いない」ラーンは目を輝かせた。「もしかしたら、あの伝説の…」
二人は言葉を交わさず、同じ方向を見つめた。遥か彼方、山脈の奥深く、誰も足を踏み入れたことのない遺跡の噂があった。そこに眠るという古代文明の遺物は、莫大な財宝だけでなく、世界を揺るがす力をも秘めていると言われている。
「あの遺跡を攻略できれば…」ラーンの鼻歌は高揚した。「俺たちは英雄になれる！」