冷たい朝露が地面を濡らす中、ビレーの街並みがぼんやりと色づき始めた。ラーンはいつものようにイシェを起こし、眠そうな目をこすりながら「今日はどこ行くんだい？」と尋ねた。
「今日はテルヘルが指定した場所だ」イシェは小さくため息をつきながら答えた。「またヴォルダンとの関係のありそうな遺跡らしい」
「またか…」ラーンは少し不満げに言ったが、テルヘルの依頼を引き受けた以上、行くしか無かった。「よし、準備するか！」と、彼はいつものように元気よく言った。
3人は、街の端にある小さな宿から出発した。まだ薄暗い空の下、彼らは東に向かって歩き始めた。ビレーから離れるにつれ、山影が長く伸びて、辺りは静寂に包まれた。
「今日は何か違う気がするな…」イシェは少し不安そうに言った。「いつもより静かだ」
ラーンの背筋もぞっとした。「ああ、そうだな。何か悪い予感する」
テルヘルは静かに周囲を見回していた。「気を引き締めてろ。ヴォルダンとの関係がある遺跡というのは、危険が多いんだ」
彼らはしばらくの間、沈黙を守りながら歩いていた。そして、やがて高い岩壁に囲まれた谷に着いた。谷底には古代の寺院跡が広がっていた。
「ここだ」テルヘルは言った。「遺跡の入り口は、あの崩れた石柱の下にあるはずだ」
ラーンとイシェは互いに顔を見合わせた。崩れた石柱の下には、暗い洞窟の入り口があった。
「さあ、入ろう」テルヘルが先頭に立ち、洞窟に足を踏み入れた。ラーンとイシェも、後ろからついていった。
洞窟の中は、薄暗く湿り気のある空気に包まれていた。わずかに差し込む光だけが、壁を不気味に照らしていた。
「何かいるぞ…」イシェが小さく叫んだ。
ラーンの視線は、洞窟の奥の方に向けられた。そこで、何者かがゆっくりと動き始めたのが見えた。