ラーンの大笑い声がビレーの街並みにこだました。今日も遺跡から持ち帰ったのは、錆びついた小刀と、使い古された布切れだった。イシェは眉をひそめた。「またか、ラーン。今日は本当に何もなかったのか?」
「いや、あったんだ!」ラーンは胸を張った。「古代文明の秘宝!この布切れには、きっと何かの暗号が書かれてるさ!」
イシェはため息をつき、小刀を丁寧に拭いた。「あの布切れは、ただの埃まみれの布切れだよ。ラーン、いつまでも夢を見続けていても仕方ないよ」
「夢を見るのは悪いことじゃないだろ!いつか必ず大穴を掘り当ててやるんだ!」
その時、テルヘルが近づいてきた。夕陽の光が彼女の鋭い目つきをより一層際立たせていた。「今日は収穫は少なかったようですね」と彼女は冷めた声で言った。「しかし、心配する必要はありません。明日には新たな遺跡の情報が入手できるはずです。黄昏時、あの廃墟の近くで待ち合わせです。」
ラーンは興奮気味に頷き、イシェはテルヘルの言葉を不快そうに聞いていた。
黄昏時の廃墟は、かつて栄華を誇った都市の残骸だった。崩れかけた石造りの建物が、まるで幽霊のように夕日に照らされていた。テルヘルは遺跡の地図を広げ、指で場所を示した。「ここには、ヴォルダンに奪われた私の大切なものがあるはずです。私はそれを必ず取り戻します」
ラーンの顔色が変わった。「ヴォルダンか…あの大国は本当に恐ろしいぞ…」
「恐れているようでは、この仕事を受けない方が良いでしょう」テルヘルは鋭い視線でラーンを見据えた。「あなたは強くなりたいと思っているはずです。そして、私はあなたをその強さに導くことができます。しかし、その代償として、私の指示に従う覚悟が必要です。」
イシェは不安を感じながらも、ラーンの決意に心を揺さぶられるのを感じた。黄昏時が深まり、廃墟の影は長く伸びていくにつれ、彼らの運命もまた、暗い影に包まれていった。