ラーンの粗雑な剣が石壁を削り、埃が舞った。イシェは咳き込みながら、「もう少し丁寧に扱えばいいのに」と呟いた。ラーンは苦笑いで、「急いでるんだってば。ほら、あの影、何かあるんじゃないか？」と、薄暗い遺跡の奥へと足を踏み入れた。
テルヘルは背後から彼らを見下ろした。「時間がない。目的の遺物を手に入れなければ意味がない」と冷たく言った。彼女の目は黄昏の色に染まっていたように見えた。
「分かってるよ。落ち着けって」ラーンがそう言うと、イシェは彼を睨んだ。テルヘルの言葉にはいつも重みがあり、どこか不穏な空気を纏っていた。
遺跡の奥深くでは、奇妙な模様が刻まれた石碑がそびえ立っていた。イシェが慎重に石碑に触れると、床に仕掛けられたトラップが発動し、鋭い矢が飛び出した。ラーンは咄嗟にイシェを庇い、矢を受け止めた。
「ラーン！」イシェが叫ぶと、テルヘルが素早く動き、残りの矢を全て弾き飛ばした。彼女の剣は黄昏の光に輝き、冷酷な美しさを持っていた。
「よし、これで安全だ」と、テルヘルは石碑に刻まれた文字を解読し始めた。「この遺跡には、ヴォルダンが求める強力な魔力の源があると記されている」
ラーンの顔色が変わった。「そんな…」
イシェが彼の手を掴んだ。「落ち着いて。まだ何も分かっていない」
黄昏の色が濃くなり、遺跡の影は深まるばかりだった。彼らはそれぞれの思惑を抱きながら、危険な探索を続けていく運命にあった。