「よし、今日はあの崩れた塔だな」ラーンが地図を広げ、太い指で地点を突いた。イシェは眉間にしわを寄せて地図を見つめた。「また危険な場所か。あの塔はヴォルダンの兵士に占拠されているって噂じゃなかったのか？」
ラーンは肩をすくめて「そんなの気にすんな。テルヘルが報酬を上げてくれるんだから大丈夫だ」と笑った。イシェは彼の Carefree な態度にため息をついた。
テルヘルは、いつものように冷たい視線で二人を見下ろしていた。「無駄な時間を使うな。目標物を確認し、迅速に行動しろ」彼女の言葉は氷のように鋭く、ラーンの笑顔を一瞬曇らせた。
崩れた塔の入り口は、朽ち果てた石畳と絡み合った蔦で覆われていた。内部は薄暗く、埃っぽい空気中に湿った臭いが漂っていた。ラーンが先頭に立ち、剣を構えながら慎重に進んでいく。イシェは彼の後を控えめについて行き、周囲を見回した。
塔の中ほどまで進むと、突然の轟音が響き渡った。ラーンの目の前で壁が崩れ落ち、そこから黒い影が現れた。ヴォルダンの兵士たちだ。彼らは鉄の鎧と鋭い剣を携え、不気味な笑みを浮かべていた。
激しい戦いが始まった。ラーンの剣は敵を次々となぎ倒していくが、彼らの数は多く、次第に追い詰められていく。イシェは冷静さを保ち、弓矢で敵を射抜いていく。しかし、彼女は傷つき、足元がふらついているのがわかった。
その時、背後から声が聞こえた。「邪魔者は片付ける」
テルヘルが優雅に現れた。彼女は漆黒のドレスをまとっており、その美しさはまるで麗人のようだった。手には短剣が輝き、その動きは猫のようにしなやかで、容赦なく敵を斬り伏せていく。
戦いが終わった後、ラーンは息を切らしながらテルヘルに言った。「お前、どこからそんなスキルを身につけたんだ？」
テルヘルは冷たい視線で彼を見下ろし、「それは関係ない」と答えた。そして、イシェが倒れているのを見て、そっと手を差し伸べた。「大丈夫か？」
イシェは少し驚いて、テルヘルの手を取った。その瞬間、彼女はまるで別の顔を持つ女性のように見えた。冷酷な仮面の下に隠された、どこか儚げで優しい感情を感じた気がした。
「さあ、目的物を手に入れよう」テルヘルはそう言い、塔の奥へと歩き始めた。ラーンとイシェは互いに顔を合わせ、複雑な感情を共有しながら、彼女の後を追いかけていった。