ラーンが巨大な石の扉を押し開けると、埃っぽい空気が彼らを包んだ。イシェは鼻をつまんで「またここか…」と呟きながら、後ろから続くテルヘルに「大丈夫?あの扉、重そうだったぞ」と声をかける。
テルヘルは視線を扉の外に回し、「この遺跡の規模から見て、今回は大物が見つかる可能性が高いわ」と答えた。彼女はいつもより興奮した様子で、剣を手に握り締めている。ラーンはそんな彼女の表情を見て、思わずニヤリと笑った。「そうか!ついに俺たちの大穴が見つかる日か!」
イシェは彼を睨みつける。「また大穴って…そんな簡単に見つかるものじゃないわよ」と呆れた様子だったが、内心では少し期待していた。この遺跡は、彼らの住むビレーから北に続く山脈にある、かつての文明の遺跡群の一つだった。
彼らは数週間かけて、この遺跡内部を探し回っていたが、まだ何も見つかっていない。テルヘルは過去の記録を元に、この遺跡にはかつて強力な魔法が使われていたという情報を得ていた。
「もしかしたら、ここに眠っている遺物は魔法の道具かもしれない…」
テルヘルがそう言った時、ラーンの足元から光が湧き上がった。それは青白い光で、地面に広がるにつれ、奇妙な模様を描き始めた。イシェは驚いて後ずさりし、「何だこれは…!」と叫んだ。
ラーンも剣を構えて警戒したが、光は彼らを襲うことなく、ゆっくりと消滅していった。その跡には、複雑な魔法陣が刻まれた石版が残っていた。
テルヘルは石版に手を伸ばし、目を輝かせた。「これは…!」
彼女は興奮を抑えきれない様子で言った。「これは、失われた魔法の書の一部だ!ここに書かれているのは、伝説の古代魔法…」