「よし、今回はあの洞窟だな。噂では奥深くにある部屋には、未開の骨董品が眠ってるらしいぞ」ラーンの声はいつもより高かった。イシェは眉間にしわを寄せながら彼の後ろ姿を見つめた。「また噂話に踊らされてるの?あの洞窟は危険だって聞いた覚えがあるぞ。罠だらけだって」
「大丈夫大丈夫、俺が行くんだから!イシェも一緒なら怖くなんかないぜ!」ラーンは自信満々に笑った。イシェはため息をついた。「いつも通りだなぁ」。テルヘルは、二人が言い争う様子を冷めた目で見ていた。「いい加減にしろ、二人とも。時間がない。あの骨董品が手に入れば、ヴォルダンへの復讐に一歩近づくんだ」
洞窟の入り口は暗く湿り気を帯びていた。ラーンが先頭に立って懐中電灯を照らしながら進んでいく。イシェは後ろから彼を見守りながら、足元を注意深く確認した。テルヘルは二人よりも少し後方を歩く。彼女の視線は洞窟の壁に張り付いたように動いていた。
深い闇の中に進むにつれ、空気が重くなり、不気味な静寂が支配した。突然、床から鋭い音が響き渡り、ラーンがよろめきながら倒れた。「しまった!罠だ!」イシェは慌ててラーンの手を掴み、引き上げた。「大丈夫か?」
「うっ…何とか」ラーンは顔をしかめた。「骨董品のために命を落とすとは…」イシェは彼の言葉を遮った。「そんなこと言わないで。まずは安全な場所へ戻ろう」
テルヘルは静かに周囲を見回した。罠の仕掛けには奇妙な装飾が施されていた。まるで、骨董品の守護者のような雰囲気を感じた。「この洞窟はただの遺跡ではないようだ…」彼女は呟いた。 ラーンとイシェは彼女の言葉の意味を理解することができなかった。しかし、彼らの直感に危険を感じさせるものがあった。
三人は慎重に洞窟を進み、ついに奥の部屋へと辿り着いた。そこには、豪華な宝飾品や武器が所狭しと並んでいた。そしてその中心に、ひときわ大きな骨董品が置かれていた。それはまるで、古代の王が身に付けていたような装飾品だった。
「これが…噂の骨董品か…」ラーンの目を見開いた。「これでヴォルダンへの復讐も夢じゃない!」イシェは冷静さを失わずに周囲を警戒した。しかし、その瞬間、部屋の壁から光が放たれ、三人は眩い光の中に包まれた。意識を失う前に、イシェはかすかに骨董品から発せられる不気味な声が聞こえた気がした。