ラーンが巨大な石門を叩き壊す音がビレーの街中にこだました。イシェは眉間にしわを寄せながら振り返った。「また破壊か？ あれで遺跡の価値が下がるんじゃないのか？」
ラーンの豪快な笑い声だけが返ってきた。「気にすんな、イシェ！ そんなことより、中に入ってみろよ！」
石門の先には広大な地下空間が広がっていた。天井から滴り落ちる水音が不気味に響き渡る。イシェは懐中電灯の光を向けながら周囲を確認した。壁面には複雑な模様が刻まれており、中央には巨大な祭壇がそびえ立っている。「ここは一体…？」
「遺跡だ！ そして、大穴への入り口だ！」ラーンの目が輝いていた。「さあ、イシェ！ 今日の運試しだ！」
テルヘルは冷静に周囲を観察していた。彼女の視線は祭壇の上に乗せられた石棺に向けられていた。「この遺跡の真の姿はまだ明らかになっていない。慎重に進まないと…」
その時、不気味な音が響き渡った。まるで獣の咆哮のような、低く重たい音だ。石棺からゆっくりと黒い煙が立ち上り、空間全体に広がっていく。イシェは恐怖で言葉を失い、ラーンは剣を握り締めた。テルヘルは冷静さを保ちながら言った。「何かがいる。すぐに逃げろ！」
しかし、その声も風の中に消えてしまうほど、轟轟と響き渡る騒音が彼らを包み込んだ。石棺から這い出す黒い影が、彼らの前に立ちはだかる。