ビレーの賑やかな市場通りを抜け、路地裏へと続く細い道に入ると、そこにはラーンとイシェの姿があった。テルヘルが手を振る。
「準備はいいか?今日は大物が入手できるかもしれないぞ」
テルヘルの言葉にラーンの顔はにこやかに開き、イシェは眉をひそめる。いつも通りの光景だ。だが、今日のテルヘルはどこか落ち着きがなく、鋭い眼光で周囲を見回している。
遺跡の入り口に着くと、テルヘルが古い地図を広げる。「ここはかつてヴォルダン貴族が所有していたものだ。内部には豪華な饗宴の場があると記録されている」
ラーンの目が輝いた。「宝の山か?」
イシェは冷静に尋ねた。「なぜそんな危険な場所を選んだ?ヴォルダンとの関係を考えると…」
テルヘルは冷たい視線を向ける。「私の目的と、この遺跡の価値は互いに関連している。ここは単なる遺跡ではない。ヴォルダンの歴史を暴く鍵になるのだ」
三人は遺跡へと足を踏み入れた。暗闇の中、石畳が続く通路は湿り気があり、不気味な静けさの中に時折、かすかな音が響き渡る。
「ここには何かがいる…」イシェの声が震える。
ラーンが剣を構え、テルヘルは影の中から現れる小動物を素早く仕留めた。「気をつけろ。ヴォルダンの魔物かもしれない」
遺跡の奥深くへと進むにつれて、壁画や彫刻が徐々に鮮やかさを増し、豪華な饗宴の様子が描かれている。テーブルには果物や酒が溢れ、華やかな衣装をまとった人々が楽しげに笑っている。だが、その笑顔はどこか不自然で、空虚な目をしていた。
「まるで生きているようだ…」ラーンが呟く。
イシェは背筋が凍りつく感覚に襲われる。「ここは何かおかしい…逃げよう」
その時、壁画から光が放たれ、部屋全体を照らした。豪華な饗宴の場が目の前に広がり、テーブルの上には、金銀財宝が山積みになっている。だが、その場に人影はなかった。
「これは…」イシェの声が震える。「ヴォルダンの貴族が、この場所で何をしたのか…?」
テルヘルはゆっくりと歩み寄り、テーブルに置かれた杯を手に取る。「ここには真実がある。そして、私の復讐の糸口も」
ラーンとイシェは互いに顔を見合わせた。遺跡から持ち帰るべきものは、金銀財宝だけではなかったようだ。