ラーンが巨大な斧を振り下ろすと、埃Cloudsが立ち上り、遺跡の奥深くへと消えていった。
「よし、これで道が開けたぞ!」
彼の豪快な笑いは、イシェにはいつも通り不安にさせるものだった。「もう少し慎重にやってもいいんじゃないのかしら…」と呟くと、ラーンは苦笑した。
「大丈夫だよ、イシェ。この遺跡は俺たちを歓迎してくれてるんだ。」
イシェはそんなラーンの言葉に懐疑的な目を向けた。
彼らの前に広がるのは、かつて誰かが住んでいた痕跡が残る崩れかけた部屋だった。壁には奇妙な模様が刻まれていて、床には石の板が散乱していた。
「ここ…どこかで見たような気がする…」イシェは呟きながら、足元に目を落とすと、小さな石の箱を見つけた。慎重に拾い上げると、中からは古い巻物が出てきた。
「これは…」イシェが驚いて声に出す前に、後ろから冷酷な声が響いた。
「何をしている?」
振り返ると、テルヘルが鋭い目で彼らを睨んでいた。彼女の隣には、いつも以上に緊張した様子の男が立っていた。
「あ、テルヘルさん!ちょうどいいところに…」ラーンが笑顔で話そうとした瞬間、テルヘルは彼を遮った。
「無駄だ。この遺跡はヴォルダンに渡す。」
「ヴォルダン?何の話?」ラーンの顔色が一瞬青ざめた。
テルヘルは男の方を向き、「確認したか?」と尋ねると、男は小さく頷いた。
「養育係がここに隠していたらしい。ヴォルダンにとっては貴重な情報だ。」
イシェの心臓が激しく鼓動し始めた。養育係…それはラーンが幼い頃に亡くなった育ての親のことだった。
「待て!これはラーンの…」イシェが抗議しようとすると、テルヘルは冷たい視線を向けた。
「もう遅い。この遺跡はヴォルダンに渡す。お前たちにできることは何もない。」