「よし、今日はあの崩れかけた塔だな」ラーンが豪快に笑う。「あの辺りに眠ってるはずだ、古代の武器庫って噂の遺跡だよ!きっと大穴が見つかるぞ!」
イシェはため息をついた。「またそんなこと?ラーン、あの塔は危険だって聞いたよ。崩落するリスクもあるし、何よりもヴォルダンの兵士が以前から調査していたらしい。うかつに近づくのは避けよう」
「大丈夫だよ、イシェ。俺たちにはテルヘルがいるじゃないか。強力な魔術使いだし、戦えるのも確かだ」ラーンは自信満々に胸を張った。
テルヘルは静かに立ち上がり、鋭い視線でラーンとイシェを見据えた。「私は危険を避けるために雇われています。無謀な行動は控えてください。今回の依頼は慎重に進める必要があります。」彼女の言葉は冷たかったが、どこか切実なものを感じさせた。
3人はビレーを出発し、崩れかけた塔へと向かった。道中、ラーンの陽気な語りかけにイシェは苦笑いを浮かべ、テルヘルは常に周囲を警戒していた。
「あの塔の遺跡は、かつてヴォルダンに奪われたものなんだ」テルヘルが突然口を開いた。「私は復讐のために、その遺跡から何かを得たい。そして、お前たちにはその力を貸して欲しいのだ。」
イシェは驚いた。ラーンの無邪気な性格とは対照的に、テルヘルの過去には深い闇があったようだ。
「でも、なぜ私たちを選んだの?」イシェが尋ねると、テルヘルは少しだけ表情を和らげた。「お前たちは、純粋で、嘘がない。それに…」彼女は一瞬だけ目を伏せた。「お前たちの存在は、私をかつての痛みから解放してくれるような気がするのだ。」
塔の入り口に近づくと、ヴォルダンの兵士が何人か見張りをしていた。ラーンは興奮気味に剣を抜こうとしたが、テルヘルが制止した。彼女は手招きでイシェに合図を送ると、影の中に姿を消していった。イシェは驚いてラーンを見つめたが、彼はただ微笑んで頷いた。
「大丈夫だ、イシェ。テルヘルには秘密があるけど、俺たちは仲間なんだ」ラーンの言葉は力強く、イシェの不安を和らげた。
そして、3人は塔へと足を踏み入れた。崩れかけた階段を登り、薄暗い通路を進んでいくにつれて、遺跡の奥深くに隠された秘密が徐々に明らかになっていく…。