ビレーの朝陽は、錆び付いた金属のように鈍く、街に差し込んでいた。ラーンは粗末な宿屋の屋根から足をぶら下げ、イシェが持ってきたパンを頬張っていた。
「今日はどこ行くんだ?」
イシェは地図を広げながら言った。「南西にある遺跡だ。テルヘルが古い記録を入手したらしい。装飾品が埋まっている可能性があるって」
ラーンは眉をひそめた。「またか。あの女の言うことなんて信用ならないぞ。きっとまた危険な場所だろう」
イシェはため息をついた。「でも、報酬がいいんだよね。あの飾りのついた剣、欲しいものじゃない?」
ラーンの目は輝き始めた。彼はイシェの言葉に引っかかるように、「ああ、確かに」と呟いた。彼の心はすでに遺跡の奥深くへと向かっていた。そこには、きっと輝く宝が眠っているはずだと信じていた。
テルヘルは三人に地図を広げ、遺跡の詳細を説明した。「ここはヴォルダン帝国の遺跡だ。かつては宮殿の一部だったらしい。装飾品だけでなく、貴重な石碑も残されている可能性がある」
イシェは眉間にしわを寄せた。「ヴォルダン帝国のものか…危険な場所かもしれないね」
ラーンは興奮気味に言った。「いいじゃないか!冒険だぞ!」
テルヘルは冷めた視線で彼を見つめ、「冒険ではなく仕事だ。成功すれば報酬が約束されている。失敗したら、命を落とすかもしれないことを忘れるな」と警告した。
遺跡の入り口は崩れ落ちた石柱と、うっすらと残る壁画で飾られていた。かつて栄華を極めた宮殿の名残だけが、そこに静かに息づいていた。
「さあ、入ろう」
テルヘルが先導し、三人は遺跡へと足を踏み入れた。
遺跡内部は薄暗く、湿った空気が漂っていた。壁には奇妙な模様が彫られており、天井からは鍾乳石がぶら下がっていた。
「ここには何かいる気がする…」
イシェは緊張した様子で周囲を見回した。ラーンは剣を構え、警戒していた。テルヘルは静かに周囲を観察し、何かを探しているようだった。
すると、床に埋められた石版から、微かな光が漏れてきた。それは、まるで宝石のように輝いており、遺跡全体を照らすかのような美しさだった。
「これは…」
イシェは息を呑んだ。
ラーンの視線も、その光に向かって釘付けになった。彼の目は、貪欲な欲望で輝いていた。
「宝だ!きっと大穴だ!」