「よし、今回はあの崩れた塔だ!噂では地下に奥深い迷宮があるらしいぞ!」ラーンが興奮気味に地図を広げた。イシェは眉間にしわを寄せながら、「またそんな薄情報に飛びつくのか? 遺跡探索は命懸けだぞ」と忠告した。だがラーンの熱意には敵わず、結局イシェも渋々頷いた。
テルヘルは冷静な表情で地図を睨んでいた。「迷宮の情報は本当か?혹시라도 危険な罠が仕掛けられていれば…」彼女は言葉を濁すが、その目は鋭く周囲を警戒している。
ビレーを出発し、日暮れに差し掛かった頃、彼らは崩れた塔の遺跡に到着した。朽ち果てた石造りの門は、まるで巨大な口を開けて闇を覗き込んでいるようだった。ラーンは興奮気味に剣を抜く。「よし、行くぞ!大穴が見つかるかもしれない!」
イシェは深呼吸し、懐から小さなランプを取り出した。「慎重に進もう。何かあったらすぐに合図だ。」
塔内部は薄暗く、湿った空気が立ちこめていた。崩れた石畳を踏みしめながら、彼らは慎重に奥へ進む。
「ここが迷宮への入り口か?」イシェが指さす先には、崩れた壁に開いた狭い穴があった。ラーンは満面の笑みを浮かべて、「ついに来たぞ!大穴だ!」と叫び、穴に飛び込んだ。
テルヘルが後を追いかけるように進む。「待て、ラーン!軽率すぎる!」イシェもためらいながらも、二人を置いておくわけにはいかず、後ろから続いた。
迷宮内部は暗く、複雑な通路が入り組んでいた。壁には古びた絵画が描かれており、どこか不気味な雰囲気を漂わせていた。彼らは慎重に道を進み、時折聞こえる不自然な音に耳を澄ませながら進んでいった。
しばらく歩くと、広間に出た。中央には巨大な祭壇があり、その周りを無数の石像が取り囲んでいた。空気が重く、何か邪悪な力を感じさせる場所だった。
「ここは…」イシェは言葉を失った。ラーンは緊張した表情で周囲を見回し、「何かいるぞ…」と呟いた。その時、床から突然黒煙が噴き出し、その中に赤い目が浮かび上がった。
「これは…!」テルヘルが剣を抜き、警戒姿勢をとる。「魔物だ!逃げろ!」
ラーンの顔色は青ざめた。「まさかこんな場所に…」イシェは恐怖で体が震えていた。三人は慌てて逃げ出すが、黒煙は彼らの後を追いかけてくる。
狭い通路を駆け抜ける三人の背後から、不気味な笑い声が響き渡り、迷宮はより一層の恐怖に包まれていった。
やがて彼らは出口を見つけ、息も絶え絶えで外へ飛び出した。 ラーンは膝をつき、深呼吸するように大きな口を開けた。イシェは震える手で水を飲み干す。テルヘルは冷静に周囲を警戒しながら、剣を拭き始めた。
「あの迷宮は…恐ろしい場所だった…」イシェが呟くと、ラーンはうなずいた。「ああ、今回は危なかった…。でも、またあの迷宮に戻りたい気分もするんだ…」彼はそう言うと、再び目を輝かせた。イシェは呆れながら、「またそんなことを言うのか…」と呟き、テルヘルは静かに彼らを眺めていた。
夕暮れの光が、彼らの影を長く伸ばしていた。