ビレーの薄暗い路地裏で、ラーンがイシェに酒を勧めた。「今日はいい仕事だったな!テルヘルのお陰で、あの遺跡の奥深くまで行けた。もしかしたら、次は本当に大穴が見つかるかもな!」
イシェはラーンの目をじっと見つめた。「また大穴か?いつまでもそんな夢を見てる余裕はないわよ。この街、食料も高騰してるし、冬が近づくにつれて人々の顔色も悪くなってるのよ」
ラーンは少しだけ表情を曇らせつつ、「わかってるよ。でもさ、いつか必ず大穴が見つかるんだって信じてるんだ。そうすれば、俺たちはもう二度と空腹を味わうことはないだろう?」
イシェはため息をついた。「あなたはいつも楽観的すぎるわ。現実を見ろ!あの遺跡から持ち帰った遺物だって、ほとんどがただの石ころだったじゃないの。テルヘルに言われた通り、ヴォルダンに奪われたものを取り戻すには、もっと何かが必要だわ」
ラーンはイシェの手を握りしめ、「心配するな、イシェ。俺たちにはテルヘルがいるだろ?彼女なら、きっと方法を見つけてくれるさ」
その時、ビレーの街全体を包むように響き渡る警鐘の音色が聞こえてきた。ラーンの顔色が一変した。「これは…悪い予感だな」
イシェも不安げに言った。「何事かあったのかしら?あの音が鳴るのは…」
二人は互いに顔を合わせ、言葉もなく街の入り口へと向かった。 そこには、ヴォルダン軍の影が迫りつつある光景が広がっていた。