ラーンが石を蹴飛ばしながら、不機嫌そうに言った。「また遺跡かよ。いい加減飽きたぜ」。イシェは視線をそらさず、地図を広げていた。「今回は少し大規模な遺跡らしいわ。報酬もそれなりだし、 complaining するには早すぎるんじゃないかしら?」ラーンの顔はさらに曇った。「おいおい、イシェ。お前も知ってるだろ?俺たちにとって遺跡探検はただの当て馬だ。いつまで経っても大穴には出会えないし、いつも腹は減ってるんだ」。
すると後ろから、冷たく響く声がした。「大穴にありつけないのは、君たちの能力不足よ。もっと真面目にやれば、ヴォルダンへの復讐も夢じゃないわ」。テルヘルが鋭い目で二人を見下ろす。ラーンは舌打ちし、イシェは小さくため息をついた。
「よし、今回は俺たちがリーダーだ。テルヘルの指示に従うんだ」。ラーンの言葉にイシェが驚いて視線を上げた。「え?でも、いつも…」 ラーンはイシェを黙らせようと手招きをした後、テルヘルに向かって言った。「よし、ヴォルダンへの復讐のために、俺たちを率いてくれよ。ただし、報酬はちゃんと払うことだな」。テルヘルは薄く笑った。「当然よ」。
遺跡の入口には、巨大な石像がそびえ立っていた。イシェは石像の刻まれた模様に目を凝らした。「これは…珍しい記号だ。見たことがあるような…」彼女は古い書物から知識を得ていたが、この記号の意味は分からなかった。
日が暮れ始め、彼らは遺跡の中を進んでいた。空腹で足がもつれるラーンを尻目に、テルヘルは冷静に状況を判断していた。イシェは、石の階段を慎重に登りながら、テルヘルの言葉を聞いていた。「ヴォルダンには、奪われたものがあるのよ。そしてそれを取り戻すために、あらゆる手段を使うつもりなの」。
その時、イシェはかすかに甘い香りを嗅ぎ取った。「あれ?いい匂いがする…」。ラーンも顔をしかめた。「おい、何か焼いてる匂いがするぞ」。すると、奥から声が聞こえた。「いらっしゃいませ!疲れた冒険者の方々ですね。どうぞ、私の作った料理を召し上がってください」。
遺跡の奥深くには、意外にも豪華な部屋があった。テーブルの上には、様々な料理が並べられていた。イシェは驚きながら言った「こんなところに…まさか…」
「食通である私も驚きました」とテルヘルが言った。「この遺跡の奥深くに、隠れた天才シェフがいるなんて…」 ラーンは目を輝かせ、すぐに料理に手を伸ばした。イシェは、少し安堵した表情を見せた。