ラーンの大笑い声がビレーの朝の静けさにこだました。イシェは眉間に皺を寄せていた。「また遺跡で見つけたって?ラーン、あの壺なんてただの破片だぞ」
ラーンはテーブルに壺を豪快に叩きつけ、「見ろよ、イシェ!この模様、珍しいだろ?」と目を輝かせた。イシェはため息をつきながら壺の欠片を眺めた。確かに独特な模様が施されていたが、価値があるとは思えなかった。「食らう」ように、ラーンはいつも夢ばかり見ている。
「いい加減にしろよ、ラーン。そんなものに希望を託すのはやめろ」テルヘルが冷たく言った。彼女の視線は鋭く、ラーンの壺ではなく、ビレーの街の外へと向けられていた。ヴォルダンとの国境付近で緊張が高まっていることを誰もが知っていた。
「大丈夫だ、テルヘル。俺には夢があるんだ!」ラーンは自信満々に言った。「いつか大穴を掘り当てて、みんなを豊かにするんだ!」
イシェはラーンの言葉に苦笑いした。「夢を見るのはいいけど、現実も見てないとね」。彼女は自分の将来を案じていた。ビレーでの生活は安定しているわけではない。
「この街で暮らしていくには、もっと堅実な生き方を選ばなきゃいけないんじゃないか...」イシェは呟いた。だが、彼女の言葉はラーンの大笑い声にかき消されてしまった。
その夜、テルヘルは一人でビレーの街から出て行った。彼女は影の中に溶け込みながら、ヴォルダンへの復讐を心に誓った。「食らう」ように、憎しみが彼女の心を蝕んでいた。