日差しが容赦なく照りつける砂漠を越えて、ビレーへと続く道を行く一行。ラーンの背中には重厚な剣が、イシェは細身の体を引き締め、テルヘルは鋭い視線で周囲を警戒していた。三人は遺跡探索を終え、ビレーへの帰路に就いていた。
「今日は収穫なしだな」
ラーンがため息をつきながら言った。イシェは小さく頷き、テルヘルは沈黙を保ったままだった。今日の遺跡は期待外れで、貴重な遺物はおろか、使い道のない石ころしか見つからなかった。
「おい、イシェ。あの時、あれは何だったんだ?」
ラーンが振り返り、イシェに尋ねた。遺跡の奥深くで、彼らは巨大な鳥の骨格と、空を飛ぶ様子を描いた壁画を見つけたのだ。
「古代文明の記録によると、それは『天翔ける獣』と呼ばれる存在らしい」
イシェは冷静に答えた。「伝説によると、彼らは空を自由に飛び回り、人々を守ったという」
テルヘルが声をあげた。「伝説か。そんなものに興味があるのか?」
彼女は軽蔑的な笑みを浮かべながら言った。「我々が目指すのは現実だ。遺跡から得られる利益、そしてヴォルダンへの復讐だ」
ラーンは少しの間沈黙し、その後、小さく頷いた。イシェはテルヘルの言葉に反論しようとしたが、やめてしまった。
日が暮れ始め、三人はビレーの街並みが少しずつ見えてきた。遠くから、鳥の鳴き声が聞こえてきた。それはまるで、空高く羽ばたく『天翔ける獣』の叫び声のようだった。ラーンの心は、いつの間にか希望で満たされていた。いつか、彼もあの空へ羽ばたきたいと強く思ったのだ。
その夜、ラーンはイシェに言った。「いつか、俺たちはあの遺跡に戻って、あの鳥の秘密を解き明かすぞ」
イシェは苦笑しながら、「そうだな。そして、大穴を見つけることも忘れずに」と言った。