ラーンの大きな息が、湿った洞窟内にこだました。イシェが眉間に皺を寄せて地図を広げている横で、彼は巨大な石扉に刻まれた紋章をじっと見つめていた。
「どうだ?何か分かったか?」
イシェの声に、ラーンは肩をすくめた。「分からん。こんなの見たことないぞ。まるで…風船みたいに浮き上がろうとしてるみたいだ」
イシェはため息をついた。「そんなわけないだろ。ラーン、また無駄なことを言ってるよ」
「いや、でもさ…この紋章、よく見ると真ん中が膨らんでて…」
ラーンの指が紋章の真ん中をなぞった瞬間、石壁から微かな音がした。イシェは一瞬にして警戒心を高める。すると、石扉の表面に細かいヒビが入っていくのが見えた。まるで、ゆっくりと膨らむ風船のように。
「まさか…」
イシェの言葉を遮るように、石扉全体がゆっくりと開き始めた。その奥には、広大な空間が広がっていた。そこには、黄金で輝く宝の山が積み上げられ、壁一面には宝石が埋め込まれていた。ラーンの目は輝き、イシェは息を呑んだ。
「大穴だ…!」
ラーンの声が洞窟内に響き渡った。その時、背後から冷たく低い声が聞こえた。
「いいものを見つけたようですね」
テルヘルが、影から姿を現した。彼女の顔には、かすかな笑みが浮かんでいた。