ラーンが遺跡の入り口で深呼吸をした。いつもと違う、湿った土の匂いがした。イシェは眉間に皺を寄せながら、「何か変だ」と呟いた。テルヘルはいつものように無表情で地図を広げ、指示を出す。「今日の目標は西側の通路だ。風向きも確認した。問題ないだろう」。
ラーンはイシェの言葉に耳を傾けず、剣を手に取り、遺跡へと踏み込んだ。薄暗い通路の中、石燈籠がわずかに光を放っている。しかし、いつもより暗く感じる。風が吹き抜けるたびに、埃と土の粒子が舞い上がり、視界を遮る。
「何かいるんじゃないか」ラーンの声は緊張していた。「風向きが変わった気がする」。イシェは耳を澄ます。「確かに...何かが近づいているような...」。テルヘルは地図を閉じ、剣を構えた。「準備はいいか」。
突然、通路の奥から不気味な音が響き渡った。石が砕ける音。獣の咆哮。ラーンの心臓が激しく鼓動する。イシェは小さく息を呑んだ。テルヘルの瞳は鋭く光っていた。風向きが変わった。今まさに、何かが起ころうとしている。