ラーンが剣を片手に遺跡の奥深くへと踏み込むと、イシェが小さくため息をついた。薄暗い通路の天井には、何かの生き物が作った巣がびっしりと張り付いており、不気味に揺れていた。
「本当にここに入らなきゃいけないのか？」
イシェは眉間に皺を寄せ、長い黒髪を後ろでまとめた。ラーンの明るい茶髪とは対照的に、彼女の髪はまるで影のように深く、静かで落ち着いた印象を与えた。
「ほら、テルヘルが言ってただろ？この遺跡には古代の宝が眠ってるって」
ラーンは振り返り、笑顔を見せた。金色の髪が、わずかな光を浴びて輝いていた。
「それに、大穴が見つかったら、イシェも夢が叶うぞ！」
イシェは少しだけ笑みを浮かべた。「そうね、確かにそうかも…」
だが、彼女の心は不安でいっぱいだった。テルヘルはいつも冷静沈着な女性だったが、今回は様子が違った。まるで何かを隠しているかのように、いつもより鋭い眼光を向けるのだ。特に、ラーンの髪に触れるたびに、彼女の目は燃えるような光を放っていた。
「何だ、イシェ。顔色が悪いぞ？」
ラーンが声をかけると、イシェは慌てて顔を上げた。
「いや、なんでもないわ」
彼女は自分の長い黒髪を撫でながら、深く息をついた。この遺跡から何か大きなものが見つかるのか、それとも、テルヘルの真意が明らかになるのか…。イシェは不安な気持ちを抱えたまま、ラーンの後をついて遺跡の奥へ進んでいった。