「よし、今日はあの崩れかけた塔だ」ラーンが地図を広げ、イシェにみせる。イシェは眉間に皺を寄せた。「また危険な場所かい? ラーン、あの塔は噂で呪われているって聞いたよ」
「そんなの気にすんな! 大穴が見つかったら、このビレーから逃げ出すんだ!」ラーンの目は輝いていた。イシェはため息をつき、地図に目をやった。「よし、わかった。でも今回は慎重に行こうな」
テルヘルは背後から静かに口を開いた。「急いでいるのか?」彼女の冷たい視線がラーンとイシェを刺すように感じた。イシェは小さく頷いた。「はい、準備はいいんです」
ビレーの街はずれにある崩れかけた塔へと向かう道中、ラーンの頭痛が酷くなった。彼は額を抑えながら、イシェに「少し休みたい」と告げた。イシェは心配そうに彼を振り返り、近くの泉で水を汲んできた。「ゆっくり休めよ」と彼女は言った。
テルヘルは静かに塔を見つめていた。彼女の顔色は悪く、眉間に深い皺が刻まれていた。ラーンを見下ろしながら、「何か問題でもあるのか?」と尋ねた。ラーンは苦しそうにうなずいた。「頭痛がするんだ…。もしかして呪い?」
イシェは驚いてラーンを見つめた。「そんなわけないでしょう! 気にしすぎよ」しかし、彼女の心には不安が広がっていた。テルヘルの冷たい視線を感じながら、彼女はラーンの様子をじっと見つめていた。
塔の内部は暗く湿り、埃っぽい空気が漂っていた。ラーンは頭痛でふらつき、イシェは彼の腕を支えながらゆっくりと階段を上った。テルヘルは先頭を歩み、鋭い視線で周囲を見回していた。
「ここだ」彼女は突然立ち止まり、崩れかけた壁を指さした。「ここに何かがある」
ラーンの頭痛は激しくなった。彼は目を閉じ、額を押さえながらうめき声を上げた。「痛い…頭が割れそうだ…」
イシェは慌てて彼を抱きしめ、「大丈夫? 何が起こったの?」と叫んだ。その時、壁からかすかな光が漏れてきた。テルヘルはそれを確認し、興奮した表情で言った。「ここに何かがある! これは大発見だ!」