ビレーの朝はいつも早かった。ラーンが目を覚ますと、イシェがすでに準備を終えていた。「今日はテルヘルさんが来る日だぞ。早くしないと怒るだろう」イシェはいつも通り冷静な声で言った。ラーンの寝癖を直しながら、今日も遺跡探索に行くことを告げた。
ラーンは yawned しながら、「ああ、そうだね。今日はあの遺跡だな」と呟いた。イシェが地図を広げると、そこには複雑に絡み合う線路が記されていた。テルヘルが指定した遺跡は、ビレーから遠く離れた場所にある、危険な場所だった。
「準備はいいか？」テルヘルが凛とした表情で現れた。ラーンの背中に剣を背負わせ、イシェに地図を渡す。テルヘルは常に計画的で、無駄な動きを許さない。三人はビレーを出発した。
道中、彼らはいくつかの小さな村を通過した。人々は貧しく、疲れ切った様子だった。ヴォルダンとの国境紛争の影響で、生活はますます厳しさを増していた。ラーンはイシェに「いつかこの国をもっと良い方向に変えたい」と呟いた。
イシェは小さく頷いたが、彼の表情は曇っていた。彼は現実主義者であり、ラーンの理想に懐疑的だった。しかし、テルヘルの目的を知っている彼にとっては、ラーンの言葉にはある種の希望を感じた。
遺跡の入り口に着くと、そこは深い霧に包まれていた。不気味な静寂が支配し、ラーンは緊張した。イシェは慎重に周囲を観察し、「何かいるかもしれない」と警告した。テルヘルは剣を構え、「準備しろ」と声を張り上げた。三人は遺跡へと足を踏み入れた。
遺跡内は暗く湿っていた。壁には古びた絵画が描かれており、謎めいた文字が刻まれていた。イシェは慎重に足取りを進める。ラーンは好奇心旺盛に、周囲をくまなく探していた。テルヘルは常に警戒を怠らず、後方を確認しながら進んでいった。
すると、突然、床の石が崩れ、深い穴が開き始めた。ラーンはバランスを崩し、穴に転落しそうになった。イシェは素早くラーンの腕をつかみ、引き上げた。だが、その隙にテルヘルが姿を消した。
「テルヘルさん！」イシェが叫んだが、返事はない。三人は暗い穴を見下ろした。深い闇の中に何かが潜んでいるように感じた。ラーンは恐る恐る、穴の縁に近づいた。その時、彼は何かを掴んだ。それは小さな箱だった。箱を開けると、そこには輝く宝石が収められていた。
「大穴だ！」ラーンの声は興奮に満ちていた。イシェも驚愕した。しかし、その瞬間、後ろから声が聞こえた。「これは私のものだ」
テルヘルが立っていた。彼女の目は燃えるように赤く輝き、手に剣を握っていた。ラーンの宝石を奪い取り、彼女は嘲笑った。「お前たちには必要ない。私はこの力を利用して、ヴォルダンに復讐する」
ラーンは怒りを感じた。イシェも混乱し、テルヘルの真意を理解しようと苦悩した。彼らは裏切られたのだ。そして、その瞬間から、三人の運命は大きく変わっていくことになった。