ビレーの朝はいつもと変わらない活気だった。ラーンが剣を肩にかけ、イシェが慎重に地図を広げる様子は、まるで昨日までの光景と重なっていた。しかし、今日は何かが違う。テルヘルが放つ視線の鋭さが、いつもより研ぎ澄まされているように感じたのだ。
「今日の遺跡は特殊だ」と彼女は告げた。「ヴォルダンとの関わりがあるらしい。危険だが、その分大きな報酬が得られるだろう」。ラーンの顔に闘志が燃え上がる。イシェは眉をひそめたが、テルヘルの言葉にはいつも引かれるものがあった。
遺跡への道は険しく、足元が不安定な場所もあった。ラーンが先頭を切って進むと、イシェが後をついていく。テルヘルは常に二人を見据え、鋭い視線で周囲を警戒していた。
遺跡内部に入ると、不気味な静けさに包まれた。壁には古びた文字が刻まれており、まるでかつてここに人が住んでいたかのように感じられた。ラーンの足音だけが響き渡り、その音が重苦しく空間に広がっていく。
深く進むにつれ、イシェの不安は増していった。遺跡の奥から聞こえてくる何か、言葉にならない音は彼女を恐怖に陥れた。ラーンは気にせず、剣を構えながら進んでいった。テルヘルは表情を変えず、周囲を警戒しながら歩を進めた。
ついに、彼らは遺跡の奥にたどり着いた。そこには巨大な石碑がそびえ立っていた。石碑の表面には複雑な模様が刻まれており、まるで何かを伝えようとしているかのようだった。
ラーンは石碑に触れると、突然激しく光り始めた。その光は部屋全体を満たし、彼らを包み込んだ。そして、その光と共に響き渡る声が聞こえてきた。「汝らよ、選ばれし者たちよ…」
イシェは恐怖で言葉を失った。ラーンは剣を握りしめ、戦いを覚悟した。テルヘルは冷静さを保ち、状況を判断していた。
その時、石碑から巨大な影がゆっくりと現れた。それは何物なのか、誰も知らなかった。しかし、その存在感は圧倒的で、彼らに絶望の淵に突き落とそうとしていた。