ビレーの市場で、ラーンが大きな声で値切り合いの最中だった。イシェはため息をつきながら、少し離れた場所でテルヘルに話しかけた。「あの騒ぎ、いつも通りだな。一体いつまで続くんだろう」。
テルヘルは静かに目を細めながら言った。「彼の熱意は、時に役に立つこともある。今はまだ、その力を制御できていないだけだ」。彼女は視線を街の外に向け、遠くに見える山脈を眺めた。その峰には、かつて栄華を極めた文明の遺跡が眠っているという噂があった。
イシェはテルヘルの視線に気づき、少し不安そうに言った。「あの遺跡について、何か知ってるのか？」
テルヘルはゆっくりと頷いた。「ある程度はね。だが、その情報は危険だ。今はまだ言えない」。彼女の言葉には力があり、イシェは深く頷いた。ラーンの大声が、まるで遠くから聞こえてくるような響きで、彼らの耳に届いた。
「イシェ！」ラーンが駆け寄って来て、「いいものを見つけたぞ！古代の宝石だ！」と興奮気味に言った。イシェは苦笑しながら、宝石を手に取ったラーンの様子を眺めた。彼はいつも、夢を追いかけているようだった。
その時、テルヘルが突然、鋭い視線でラーンの顔を見た。「待て、ラーン」。彼女はゆっくりと口を開き、「あの宝石はただの飾り物ではない。何か秘密を隠している」。ラーンの表情は曇り、イシェも不安げにテルヘルを見つめた。
夕暮れ時、ビレーの街は茜色に染まり始めた。三人は静かに tavern に座り、互いに言葉を交わさずに酒を飲んでいた。彼らの心には、これから始まる冒険への期待と、同時に、未知の危険への不安が入り混じっていた。