ビレーの朝焼けは、いつもより青白く空を染めていた。ラーンがいつものように寝坊したため、イシェは一人で朝食の準備をしていた。「今日はあの遺跡に挑戦だぞ」とラーンの声がする。イシェは小さくため息をついた。
「また、大穴の話か…」
ラーンの夢は「大穴」。伝説の遺跡に眠ると言われる莫大な財宝のことだ。しかし、イシェにはそんな夢など見せない現実的な性格だった。特にこの数ヶ月、テルヘルという謎めいた女性が加わってからはなおさらだ。彼女はヴォルダンからの復讐を誓うと語り、遺跡探検の資金を提供する代わりに、遺物の独占を要求してきたのだ。
「今日は特に注意深く見ておけ」とテルヘルは冷たく言った。「あの遺跡には危険な罠があるという噂だ」彼女の青い瞳は、まるで氷のように冷たい光を放っていた。ラーンは気にせず、いつものように無邪気に笑った。イシェは、そんな彼を心配する気持ちと、テルヘルの言葉に感じる不気味さを同時に抱いていた。
遺跡の入り口は、青白く苔むした石で覆われていた。一歩足を踏み入れると、ひんやりとした湿った風が肌を刺す。イシェは背筋が凍るような感覚を覚えた。ラーンは意気揚々と進むが、イシェは慎重に周囲を観察した。すると、壁の一面に青白い光沢を持つ奇妙な模様が描かれていることに気づいた。まるで警告のように、不気味な輝きを放っていた。
「ラーン、あの模様を見て」とイシェが声をかけた時、突然地面が崩れ、ラーンは深い穴に落ちてしまった。イシェは驚いて叫んだ。「ラーン!」テルヘルは冷静に状況を判断し、ロープを投げ下ろした。
「大丈夫だ、引っぱり上げろ!」
イシェは必死にラーンを助け上げた。彼は顔色を変え、青白い汗を流していた。
「あの模様…何か悪い予感がする…」とラーンは震える声で言った。イシェも、彼の言葉に同感した。遺跡の奥深くでは、何か邪悪な力が眠っているような気がした。 そして、その力は、青白く輝く光と共に、彼らを待ち受けているように感じた。