ラーンの豪快な笑い声がビレーの狭い路地をこだました。イシェは眉間にしわを寄せながら、彼を睨みつけた。「また無駄遣いしたのか？あの酒場で飲み明かしたって言うなら、明日のお前の分の食料代はないぞ」
「気にすんなって！今日は大穴が見つかる予感がするんだ！ほら、テルヘルも言ってただろ？」ラーンは胸を張った。イシェはため息をつきながら、視線をテルヘルに向けた。
テルヘルはいつものように冷静に地図を広げ、遺跡の配置を確認していた。「準備はいいか？今日の目標は北西部の廃墟だ。そこには古代の武器庫が眠っている可能性がある」
ラーンの目は輝いた。「わっはっは！古代の武器庫か！宝刀でも手に入るかもな！」イシェは彼の興奮を冷めた目で眺めていた。「武器庫なら、危険な罠も仕掛けられているだろう。油断するなよ、ラーン」
廃墟の入り口に立つと、そこは不気味な静寂に包まれていた。朽ち果てた石造りの壁には苔が生え茂り、風で音を立てる枯れ枝が不安を掻き立てる。テルヘルは先頭に立ち、慎重に進んでいった。ラーンはイシェに肩を叩きながら、「ほら、冒険だぞ！」と声をかけた。
しかし、イシェは彼の軽薄な態度にうんざりしていた。なぜ、この男と一緒に遺跡探索をしているのか、何度も自問自答した。安全第一の彼とは対照的なラーンの行動力と無謀さは、時にイシェを危機に陥れたこともあった。それでも、彼には何か惹かれるものがあった。彼の不器用な優しさ、仲間への献身的な姿勢…
「イシェ、どうした？」ラーンの声に気がついたイシェは慌てて立ち直った。「ああ、何もないよ」と彼は答えたが、胸の奥底では複雑な感情が渦巻いていた。
廃墟の中を進むにつれて、空気が重くなり始めた。壁には奇妙な記号が刻まれ、不気味な影が彼らを嘲笑うように揺れていた。ラーンの笑顔は消え、イシェの顔色も青白くなってきた。
突然、床板が音を立てて崩れ、ラーンが深淵に転落した。「ラーーン！」イシェとテルヘルが駆け寄ると、ラーンは血を流して倒れていた。彼の視線は迷いながらも、イシェに向かっていました。「イシェ…気をつけろ…」
その瞬間、廃墟の奥深くから、不気味な咆哮が響き渡った。