ビレーの朝焼けは、いつもより少し青みがかった。ラーンはイシェを起こすために、粗末なベッドの上で足音を立てて歩いた。
「起きろよ、イシェ。今日はテルヘルが遺跡について何か情報を持っているらしいぞ」。
イシェは眠ぼけで目を擦った。「何の遺跡だ?また危険な場所じゃないだろうな」。
「いや、今回は違うみたいだ。テルヘルはヴォルダンとの国境近くにある遺跡について調べているらしい。青嵐の伝説が残る場所だって」
イシェは一瞬立ち止まった。「青嵐…?あの伝説は本当なのか?」
ラーンはニヤリと笑った。「本当かどうかは知らないが、テルヘルが興味を示しているということは、何かあるはずだ」。
ビレーを出ると、空にはまだ薄暗い青色が広がっていた。テルヘルはいつも通りの黒い装束を身にまとい、街の tavern の前で待っていた。
「準備はいいか?」
テルヘルは少しだけ口調を柔らかくした。「今日は特別な日だ。あの遺跡から何か見つけ出せれば、我々の未来が変わると信じている」。
イシェはテルヘルの言葉に少しだけ心を動かされた。青嵐の伝説は、ヴォルダンとの戦争で破壊された故郷を思い起こさせた。
三人は街はずれにある森の中を歩き始めた。木々の間から差し込む光が、まるで青色のフィルターを通したように見えた。
「あの遺跡には危険な罠が仕掛けられているらしい」とイシェは言った。「本当に青嵐の伝説が本当なら、強力な魔物が出現する可能性もあるぞ」。
ラーンは笑って答えた。「大丈夫だ。俺たちが一緒なら、どんな敵にも立ち向かえる」。
テルヘルは沈黙を保ちながら、森の中を進んだ。彼女の目は、どこか遠くを見つめていたようだった。
遺跡の入り口には、朽ちた石柱がそびえ立っていた。柱には青白い光がかすかに輝き、まるで生きているように見えた。
「ここだ」とテルヘルは言った。「ここから先は、慎重に進もう」。
三人は遺跡の内部へと足を踏み入れた。空気を切り裂くような冷気が肌に突き刺さる。壁には奇妙な文様が刻まれており、まるで古代の呪文のように見えた。
ラーンの足が止まった。「イシェ、何か感じるか?」
イシェはうなずいた。「何か…不気味な気配を感じた」。
その時、遺跡の奥の方から、かすかな青白い光が放たれた。その光はゆっくりと近づいてくるにつれて、まるで巨大な波のように広がっていった。
「これは…」
ラーンが言葉を失った。目の前には、青嵐が渦巻いているように見えた。