冷たい霧雨がビレーの街を包んでいた。ラーンが店先で酒を煽り、イシェが眉間に皺を寄せて地図を広げていると、テルヘルがそっと近づいてきた。
「準備はいいか。今日は大雨になりそうだから、遺跡に入るには絶好のタイミングだ」
ラーンの視線がイシェにいく。イシェは渋い顔で頷いた。「霧雨の中だと視界が悪いし、遺跡の入り口もわかりにくくなるだろう」
「だが、それ故にヴォルダンからの監視も薄れる可能性がある」テルヘルが冷たく言った。「今日は我々が最も安全かつ効率的に relic を手に入れることができる日だ」
ラーンの顔色が明るくなる。彼は剣を手に取り、興奮気味に立ち上がった。「よし、行こうぜ！イシェ、今日は大穴を見つけてやるぞ！」
イシェはため息をつきながら立ち上がった。「また無駄な夢を見るのか…」と呟いたが、テルヘルの鋭い視線を感じて言葉を飲み込んだ。三人は霧雨の中を、遺跡へと向かった。
湿った石畳の上を歩くと、足元から冷たい空気が立ち上ってくる。視界は霧で覆われ、遠くの景色はほとんど見えなかった。
「あの建物は…」イシェが指さす方向を見ると、ぼんやりと建物の輪郭が見えた。「遺跡だ」
ラーンは興奮気味に駆け出した。テルヘルも後を追い、イシェだけがゆっくりと続く。遺跡の入り口は崩れかけていて、苔むした石段が朽ち果てている。
「気をつけろ！」テルヘルの声と共に、突然、地面から何者かが飛び出して来た。ラーンは剣を抜いて応戦するが、その影は素早く動き、ラーンの攻撃をかわす。イシェは驚いて後ずさった。
霧雨の中、奇妙な生き物がうなり声をあげながら襲いかかってきた。それはかつて遺跡の守護者だったとされる獣で、長い年月をかけて変質した姿をしている。
「これは…！」イシェが言葉を失う。ラーンは剣を振り下ろしたが、獣の硬い皮膚には届かない。テルヘルは冷静に状況を見極め、影から飛び出すように攻撃を仕掛けた。
激しい戦いが霧雨の中繰り広げられた。三人は互いに助け合いながら、獣と戦い続けた。だが、獣は強く、疲れが溜まっていく。
その時、イシェが何かを発見した。「あの石碑…」
イシェが指さす方向を見ると、遺跡の奥に古びた石碑が立っていた。石碑には不思議な紋様が刻まれており、その紋様からかすかに光が放たれている。
「もしかして…！」イシェの目は輝き始めた。
ラーンとテルヘルも石碑の存在に気づき、獣を一時的に忘れたように見つめた。霧雨の中、石碑が放つ光は希望の灯のように見えた。