ビレーの朝はいつも薄暗い。灰色がかった空の下、霧氷が地面を覆い、足音だけが響く。ラーンはイシェを待っていた。いつものように遅刻だ。「今日は何かいいものが見つかる気がするんだ」とラーンはにこやかに言った。イシェは小さくため息をつきながら、彼の手渡された粗末な地図を確認した。今日はテルヘルが指定した遺跡だった。ヴォルダンとの国境に近い場所であり、危険な場所として知られていた。
遺跡の入り口には霧氷が厚く積もり、視界を奪っていた。ラーンは剣を構え、イシェに「準備はいいか？」と尋ねた。イシェは頷くと、小さな銀色の宝石を握りしめた。テルヘルが渡してくれたものだ。「安全を祈る」と言葉と共に、イシェは宝石を握りしめると、霧氷の中に消えていった。ラーンは深く息を吸い込み、後に続く。
遺跡内部は寒気が漂い、静寂に包まれていた。壁には奇妙な模様が刻まれており、時折、かすかな光が脈打つように輝いていた。ラーンの足音だけが響き渡る中、イシェが突然立ち止まった。「何か感じる」と彼女は小声で言った。ラーンの視線が鋭く周囲を走らせたその時、地面から霧氷が噴き上がり、巨大な影が現れた。それは奇妙な形をした獣で、全身が霧氷で覆われていた。
「これは…！」ラーンは言葉を失った。イシェは冷静に宝石を握りしめ、光を放ち始めた。獣の動きを遅らせようと試みた。ラーンは剣を振り下ろしたが、獣は素早くかわし、鋭い牙がラーンの腕を襲いかかった。
その時、背後から氷の矢が獣の体を貫いた。テルヘルが駆けつけ、冷静に戦いを指揮した。彼女の指示に従い、ラーンとイシェは協力して獣を攻撃する。激しい戦いの末、ついに獣は崩れ落ちた。
霧氷がゆっくりと溶け始め、遺跡の奥に続く通路が現れた。テルヘルは疲れた表情で言った。「あの獣は強力だった。だが、これで目的は近い…」彼女の目は光り輝き、ラーンとイシェは互いに顔を見合わせた。彼らの前に広がるのは、未知なる冒険への道だった。