ビレーの朝焼けは、ラーンの粗雑な寝癖と共に消えていった。イシェがいつものように冷たい水で顔を洗う彼の横でため息をついた。「今日はあの遺跡だっけ?」
「そうだよ!地図には古代の宝庫って書いてあったんだ。ほら、きっと大穴があるはずだ!」
ラーンは興奮気味にテーブルを叩き、イシェは小さく溜め息をつく。テルヘルはいつものように冷静だった。「準備はいいか?今回は特に危険な遺跡らしい。情報も少ないし、ヴォルダンの影もちらつくかもしれない」
彼女の言葉にラーンは一瞬表情を曇らせたが、すぐにいつもの笑顔を取り戻した。「大丈夫だよ!俺たちがここにいるんだから!」
遺跡の入り口は崩れかけ、まるで獣の口のように闇を吐き出していた。ラーンの大剣が光り、イシェの細身の体も緊張に震えていた。テルヘルは静かに地図を広げ、わずかな情報から遺跡の構造を読み解こうとしていた。
奥深くまで進むにつれて、壁には奇妙な絵文字が刻まれており、何とも言えない不気味さを漂わせていた。そしてついに、巨大な石扉が現れた。扉には複雑な紋様が施され、まるで生きているかのように脈打つように光を零らせた。
「これは…」イシェは声を失った。ラーンは興奮を抑えきれず、「開けろ!宝が待ってるぞ!」と叫び、剣を振るい始めた。しかし扉は budge しなかった。テルヘルが冷静に状況を見極めた。「無理だ。この扉を開けるには何か特別な方法が必要だ。地図にもそんな記述があったはず…」
その時、背後から不気味な音が響き渡った。振り返ると、影が彼らを包み込むように迫っていた。ラーンの顔色が変わった。「ヴォルダンか…」
イシェは冷静に状況を判断した。「逃げろ!ここは罠だ!」
三人は慌てて逃げるも、影は執拗に追いかけてくる。狭い通路で、ラーンが敵を一人倒そうとするも、背後から攻撃され深手を負ってしまった。
イシェがラーンの傷口を抑えながら、「テルヘル、何とかして!」と叫ぶ。テルヘルは冷静さを失わず、地図を再び広げ始めた。扉の紋様の配置、影の形…何かが閃いた。「この紋様…!」
彼女は突然走り出し、壁に刻まれた紋様に触れた。すると石扉から光が零れ、影は消滅した。扉が開き、そこには輝く宝の山が広がっていた。しかし、ラーンの顔は蒼白だった。
「イシェ…」彼の声は弱々しかった。「俺…もうダメだ…」