ラーンが巨大な石の扉を蹴飛ばす音だけが、埃っぽい遺跡の空気を切るように響き渡った。背後からイシェがため息をついた。「またか、ラーン。計画性ゼロだぞ。あの扉は一体何百年も封印されてたはずだろう。」
「大丈夫だよ、イシェ！ほら見て、こんなところに宝箱があるなんて！」ラーンは興奮気味に、扉の向こう側に広がる部屋の中央にある宝箱を指差した。しかしイシェは眉間にしわを寄せながら、宝箱の周りを注意深く見回った。「何か変だぞ…。この部屋、まるで…」
その時だった。床に埋められた石畳がわずかに動き、まるで息をするようにゆっくりと沈み始めた。ラーンの足元から零れ落ちた砂埃が、空中に舞うようにゆっくりと渦を巻いた。イシェはラーンを引っ張る。「やばい！逃げろ！」
しかし遅かった。石畳は急速に沈み込み、ついに二人は巨大な穴に飲み込まれてしまった。
「ぐわっ…！」ラーンの叫びが、深い闇の中に響き渡った。
意識を取り戻したラーンは、冷たい石の上で目を覚ました。イシェの姿が見えなかった。「イシェ！どこだ？」
すると背後から、冷酷な声が聞こえた。「ここからは、私が案内する。」
ラーンが振り向くと、そこにはテルヘルが立っていた。彼女の表情は暗く、鋭い眼光をラーンに向けた。「あの宝箱は罠だった。そして、この穴はヴォルダンが仕組んだものだ。」
「ヴォルダン…？」ラーンの心は氷のように冷えた。イシェの姿はどこにもなく、テルヘルの言葉から、恐ろしい真実が彼を襲った。
「ヴォルダンは、この遺跡に何かを隠している。そして、お前たちを利用してそれを手に入れようとしている。」テルヘルは剣を抜き、ラーンの前に構えた。「さあ、ラーン。私と共に、ヴォルダンの野望を阻止しよう。」
ラーンの視線の先に、暗闇の中に零れ落ちた砂埃が渦を巻く様子があった。それはまるで、深い闇に隠された真実を告げているかのようだった。