ラーンが宝刀を抜き放つ音だけが、静寂を破る。遺跡の奥深くへと続く通路は薄暗く、湿った空気中に埃が舞っていた。イシェは後ろからラーンの背中を見ながら、眉間に皺を寄せた。
「本当にここなのか？いつも迷子になるんだから、地図くらいちゃんと持っていけよ」
「大丈夫だ、イシェ。俺の勘が言ってるんだ。ほら、あの壁画、何か刻まれてないか？」
ラーンが指さす壁画は、風化してほとんど見えなくなっていたが、確かに幾何学模様のようなものがかすかに浮かび上がっていた。イシェは懐中電灯を向けると、模様がわずかに光り始めた。
「なるほど…もしかしたら、ここが隠された通路の入り口なのかも…」
その時、背後から冷酷な声が響いた。「どうだ、二人は何か見つけたようだ」
ラーンとイシェは振り返ると、テルヘルが立っていた。彼女の鋭い視線は、まるで獲物を見据える獣のようだった。
「何をしているんだ？ここは俺たちの縄張りだ」
ラーンの言葉にテルヘルは冷笑した。「縄張り？この遺跡は誰のものでもない。そして、お前たちにはこの遺跡を解き明かす力はない」
ラーンが激高しそうになったその時、イシェが静かに手を上げた。「落ち着けラーン。テルヘルさんの言う通りだ。あの壁画はただの模様じゃない。何か仕掛けがあるかもしれない。彼女と一緒に調査してみよう」
イシェの言葉にラーンも少し冷静になり、テルヘルに視線を向けると、彼女は小さく頷いた。三人は壁画の前に集まり、その謎を解き明かすために議論を始めた。
しかし、その議論は長くは続かなかった。突然、壁から風が吹き出し、床が激しく震え始めた。壁画の模様が光り輝き、部屋全体を包むように広がっていく。三人は驚きと恐怖で固まった。その時、壁の一部が崩れ落ち、その隙間から暗い通路が現れた。
「これは…！」イシェが声を上げたが、ラーンはすでにその通路に足を踏み入れていた。テルヘルも後を追い、イシェは深くため息をつきながら三人に続く。
彼らは未知の世界へと足を踏み入れたのだ。そして、その先に待ち受ける運命は、彼らを雲隠れさせるほどの衝撃的なものだった…。