「準備はいいか？」ラーンの粗い声でビレーの朝が覚めた。イシェはいつものように、彼の無計画さにため息をつきながら、小さな道具を satchel に詰め込んだ。今日はテルヘルからの依頼で、街から南に3日の道のりにある遺跡に向かう。
「あの遺跡は危険だって聞いたことがあるんだけど…」イシェの言葉はラーンの耳に入らなかった。彼はすでに外へ飛び出し、大きな剣を肩に担いでいた。「よし！行こう！」彼の豪快な声は、まだ眠れる街に響き渡る。テルヘルは薄暗い部屋で地図を広げ、その上にある小さな石を指で動かしていた。「ここだ。ここはヴォルダンが侵攻した際に激しい戦いが繰り広げられた場所だ。遺物は多く残っているだろう。」彼女の目は冷酷に輝いていた。
遺跡は、荒れ果てた石造りの門が崩れ落ち、朽ちかけた壁が残るだけの寂れた場所だった。かつて栄えた街の面影はほとんどなく、今や獣と風だけがこの地に暮らしていた。ラーンは興奮気味に遺跡の中へ飛び込み、イシェは彼を尻目に慎重に足場を確認しながら進んだ。テルヘルは後ろから二人を見下ろすように歩いていた。
「ここにはヴォルダンが奪ったはずの遺物があるはずだ。」彼女は言った。「私はそれを取り戻す。そして、彼らへの雪辱を果たす。」
彼らは遺跡の奥深くへと進んでいった。崩れた壁を乗り越え、朽ちた階段を上り、危険な落とし穴を避けながら。イシェはラーンの無謀さに何度も不安を感じながらも、彼の背中を追いかけるように歩を進めた。テルヘルの冷酷な表情は、彼らの前に進むにつれてますます強くなった。
そしてついに、彼らは遺跡の中心部にたどり着いた。そこには巨大な石棺が置かれており、その周りを何体もの骨が散らばっていた。ラーンは興奮した様子で剣を抜き、石棺の蓋に近づこうとした。
「待て！」イシェが叫んだ。「何か変だ…」彼女の直感は、この場所で何か邪悪なものが眠っていることを感じ取らせていた。しかし、ラーンの耳には届いていなかった。彼はすでに石棺に手をかけた瞬間、床から黒い霧が噴き出し、彼を包み込んだ。
「ラーン！」イシェの叫びが虚しく響き渡る中、黒い霧はラーンを飲み込み、巨大な影へと変貌した。テルヘルは冷静に状況を判断し、剣を抜いた。
「ヴォルダン…」彼女は呟いた。「お前が仕組んだ罠か？」
影はイシェに向かって襲いかかった。彼女は恐怖を感じながらも、ラーンのために立ち向かうことを決意した。そして、その瞬間、テルヘルの背後から一陣の風が吹き抜けた。
「待て！」
聞き覚えのある声。それは、ヴォルダンとの戦いで失ったはずの彼女の兄の声だった。