ラーンが、イシェの眉間にしわを寄せる様子を見て「また何だ?」と笑いかけた。イシェは、テルヘルの指示で手に入れた古い地図を広げ、指を走らせていた。「遺跡の入り口の位置が…変なんだ」。イシェは雪解け水が流れてきた路地裏の壁に貼られた地図を指差した。「ここには記されてないはずの道がある。もしかしたら、テルヘルが何か隠しているんじゃないか?」
ラーンは肩をすくめた。「そんなことより、今日の報酬はどうするんだ?あの貴族のおっさんの依頼で、結構いい値段もらえるぞ!」 彼の目は、イシェの眉間に刻まれたしわよりも、地図に記された遺跡への道よりも、 tavern の暖炉の向こう側に広がる酒宴を想像しているようだった。
「でも…」イシェはためらった。「あの貴族のおっさん…何か怪しいと思わないか?雪解け水と一緒に流れてくるような噂話ばかり聞かせるし…」
ラーンの顔は曇り始めた。「イシェ、お前って本当に慎重すぎるよな!いつまでそんなこと言ってんだ?俺たちには大穴を掘り当てて、ビレーから出て行く夢があるんだぞ!」
「私も大穴を見つけたい。でも…」イシェはため息をついた。「あの貴族のおっさん、一体何を企んでいるのか…テルヘルも何か知ってるんじゃないか?」
その時、テルヘルが tavern に入ってきた。彼女は濡れたコートを脱ぎ捨て、テーブルに地図を広げた。「よし、準備はいいか?遺跡の入り口は変動しているようだ。雪解け水の影響で、古い道が姿を現したらしい。」 彼女は鋭い視線でラーンとイシェを見据えた。「さあ、行くぞ。」
ラーンの胸には興奮が渦巻いていた。イシェの不安を振り切り、大穴を求めて遺跡へと向かう。雪解け水が溶け出すように、彼らの人生もまた、今、動き始める。