冷たい風が吹き荒れる中、ラーンとイシェは凍えながら遺跡の入り口前で待っていた。
「本当にここなのか？ テルヘル、また騙されちゃったら困るぞ。」
イシェが眉間に皺を寄せると、ラーンは肩をすくめた。
「大丈夫だ。テルヘルは本気だ。それに、あの日見つけた古代の地図が偽物だったとは思えんよな？」
イシェは何も言わずに、遺跡の入り口にある雪を払った。厚い雪が積もり、まるで冬眠する巨大な獣のように静かに息づいていた。
「よし、準備はいいぞ？」
ラーンの言葉にイシェは頷き、重い扉を開け始めた。扉の向こうには、深い闇が広がっていた。
テルヘルは遺跡の中央で待っていた。彼女の鋭い目は、まるで氷柱のように冷たかった。
「遅れたな。雪囲いが崩れてしまい、入り口が見つからなかったんだ。」
ラーンの言い訳を聞き流すように、テルヘルは地図を広げた。
「今回はここだ。この遺跡には、ヴォルダンに奪われた私の大切なものがある。それを手に入れるためなら、どんな危険も乗り越える覚悟だ。」
イシェはテルヘルの瞳の奥底に宿る憎しみに戦慄を感じた。ラーンはいつものように無邪気に笑っていたが、イシェは彼の笑顔にも影を感じた。
遺跡の中は、寒さだけでなく、何とも言えない不気味な静けさに包まれていた。壁には古びた絵画が描かれており、その中には雪に閉ざされた村や、凍りつくような寒さに耐える人々の姿があった。まるで過去の人々がこの遺跡の中で、雪囲いのように閉じ込められたかのような印象を受けた。
「気をつけろ。ここはかつてヴォルダンの兵士たちが潜伏していた場所だ。」
テルヘルが言った。イシェは緊張した表情で周囲を見回した。ラーンは剣を握りしめ、静かに歩を進めた。
遺跡の奥深くでは、かつてヴォルダンに奪われたもの、そして雪囲いの向こうに眠る真実が待っていた。