ビレーの薄暗い酒場にはいつもより賑わいがあった。大穴掘りの噂話に加え、今日は天候不順で多くの旅人が立ち寄っていたのだ。ラーンはイシェに声をかけながら、テーブルを確保した。
「おい、イシェ!今日は雨だしな、いい酒だと思って一杯やろうぜ!」
イシェは小さくため息をついた。「また無駄遣いするんだね。あの遺跡の調査報告書、まだ終わってないじゃないか。」
「まあ、いいんだよ。たまには贅沢も必要だろ?」ラーンは豪快に笑い、酒を一気に飲み干した。
そのとき、ドアが開き、黒ずくめのマントをまとったテルヘルが入ってきた。彼女はいつもと様子が違った。険しい表情で、視線をテーブルに向け、少しの間静かに立ち尽くす。
「何かあったのか?」ラーンの問いかけに、テルヘルは小さく頷いた。
「ヴォルダンからの連絡だ。動きがあるようだ。」
イシェは眉をひそめた。「ヴォルダンか...まさか、またあの遺跡のことか?」
テルヘルは席につくと、低い声で言った。「違う。今回は別の場所だ。かつての戦場跡だという情報を得た。そこには何か重要なものがあるらしい。」
ラーンの表情が硬くなった。「重要なものか...。」
「我々が必要なものは必ずそこにある。」テルヘルは目を鋭くした。「そして、それはヴォルダンを倒す鍵になるだろう。」
イシェは不安げに言った。「でも、ヴォルダンとの距離は近いし、危険すぎるんじゃないか?」
「リスクは承知している。」テルヘルの声は揺るがない。「今回は雨模様が続く。 Visibilityが低下し、ヴォルダンの動きも制限されるだろう。このチャンスを逃すわけにはいかない。」
ラーンは立ち上がり、テーブルを叩いた。
「わかった!行くぞ!イシェ!」
イシェはためらいながらも立ち上がった。テルヘルは満足げに微笑んだ。
外は雨が激しく降っていた。三人はビレーの街灯の下、雨の中を歩を進めた。目的地の遺跡は険しい山道にあり、悪天候の中、行く手を阻むように立ちはだかるだろう。だが、三人の心には揺るぎない決意があった。
ヴォルダンへの復讐のために、そして夢のために。