ビレーの空は鉛色だった。昨日から降り続いた雨がようやく上がり、地面は水浸しになっていた。ラーンとイシェはテルヘルの指示で、街はずれの湿った森に向かっていた。遺跡への入り口は、いつもより早く見つかるように、テルヘルが事前に調査したという。
「こんな雨の中じゃ Visibility が悪い」ラーンが眉間に皺を寄せながら言った。「遺跡に潜るのも大変だしな。今日は様子見でいいんじゃないのか?」
イシェは冷静に「テルヘルが急いでいるのは分かるだろう。それに、雨上がりこそ遺跡の危険度が増す時でもある」と答えた。
森の中は霧が立ち込めていて、視界が悪い。足元はぬかるんでいて、歩きづらい。ラーンの足音だけが響き渡る静寂の中、イシェは何かを察知した。「待て、ラーン」と彼女は声を張り上げた。
だが、ラーンの背後から、鋭い金属音が響いた。ラーンは振り返ると、黒い影が彼に向かって襲いかかってきた。剣を構える間もなく、ラーンは地面に叩きつけられた。イシェは慌てて飛び出して、影の攻撃を受け止めた。
影はテルヘルだった。彼女は濡れた黒髪を振り乱しながら、鋭い目でラーンを見下ろした。「油断していたようだな、ラーン。雨上がりの遺跡は、いつも以上に危険だ」と冷たく言った。
イシェは「何をしているんですか、テルヘルさん!?」と怒りを露わにした。
テルヘルは何も言わずに、森の奥へと歩き出した。ラーンとイシェは互いに顔をみ合わせた。テルヘルの行動には何か理由があるはずだ。二人は互いに頷き合い、テルヘルの後を追いかけることを決めた。