「おい、イシェ、この地図、合ってるのか?ここには何もないぞ。」ラーンが不機嫌そうに岩壁を叩いた。
イシェは細長い指で地図を広げ直しながら言った。「落ち着きなさい、ラーン。この記号、よく見てみろ。これは古代のシンボルだ。遺跡の入り口は必ずしも目に見える場所にあるわけではないかもしれない。」
「でも、こんな荒れ地の中、何時間も探しても何も見つからないってどういうことだ?」
ラーンの言葉に、テルヘルが冷めた声で切り込んだ。「焦るな、大男。難題を乗り越えるのが冒険の醍醐味ではないか?」
彼女の手には古い巻物があり、指先で文字をなぞっていた。それはヴォルダンとの戦いで失った彼女の故郷に関する貴重な情報を含むものだった。その復讐を果たすため、彼女はあらゆる手段を尽くす覚悟だった。
「だが、この地図は…」イシェが言ったが、ラーンの怒号が彼女の声を掻き消した。
「もう限界だ!こんな無駄な探検に時間を費やすのは終わりだ!」ラーンは剣を抜き、岩壁を斬りつけた。「俺たちには別の仕事がある。」
テルヘルは鋭い視線でラーンを見据えた。「落ち着きなさい。諦めるな。この遺跡には必ず何かがあるはずだ。そして、それは我々の目標に繋がるものだ。」彼女の言葉は揺るぎない決意に満ちていた。
イシェはため息をついた。ラーンの感情的な行動とテルヘルの冷酷な計算に挟まれた彼女は、いつも疲弊していた。それでも、この難題を乗り越えなければいけないことを知っていた。
その時、イシェの足元に小さな光が瞬いた。それは地面に埋もれた石版だった。その上に刻まれた古代文字は、かつて見たことのない記号で埋め尽くされていた。イシェは息を呑んだ。
「これだ…!」彼女は興奮を抑えきれず言った。「これは、遺跡への真の入口を示すものだ。」