ビレーの朝焼けが、ラーンの寝顔に反射した。イシェがいつものように早く起きて朝食の準備をしていた。今日はテルヘルが指定した遺跡の調査だ。いつもより少し緊張感が漂っていた。
「準備はいいか?」
イシェの声でラーンが目を覚ます。テーブルには粗末ながらも温かいスープとパンが並んでいた。「ああ、待てよ。」ラーンは慌てて立ち上がり、剣を手に取った。
テルヘルは昨日から不機嫌だった。ヴォルダンとの交渉が決裂したらしい。その原因は彼女が口にすることはなかったが、ラーンの直感には何か大きなことが起きていると感じられた。
遺跡に到着すると、テルヘルはいつものように指示を出す。「ここを重点的に探せ。」彼女の視線は鋭く、どこか悲しげだった。
遺跡内部は暗くて湿っていた。ラーンとイシェは慣れた手つきで壁を叩き、隠された通路を探した。しかし、今回はなかなか成果が見えなかった。
「何かあったのか?」イシェがテルヘルに尋ねた。「……いいえ。」彼女の答えは curt で、いつもより冷たい。
日が暮れ始めると、ついにテルヘルが声を上げた。「もう帰る。」彼女は疲れた様子で言った。「今日はここまでだ。」
ラーンは何か言いたげだったが、言葉に詰まった。イシェも同様だった。
「待てよ。」ラーンの声が響いた。「何かあったら話してくれ。俺たちを信頼するならな。」
テルヘルはしばらく沈黙した。そしてゆっくりと口を開いた。「実は…」
彼女は自分の過去を語り始めた。ヴォルダンとの因縁、復讐の誓い。そして、そのために必要なもの。それは、遺跡に眠るという伝説の遺物だった。
「それを手に入れるためには、あなたたちが必要なんだ。」彼女の目は涙で潤んでいた。「でも、もし失敗したら…」
彼女は言葉を濁した。ラーンとイシェは互いに視線を交わした。彼らはテルヘルの真意を理解していた。
「わかった。」ラーンが言った。「俺たちはあなたを信じる。」
イシェも頷いた。
三人は遺跡から出て、ビレーの街灯に照らされた道を歩いた。沈黙が続く中、ラーンの心には予感がした。
この冒険は彼らをどこへ導くのか?そして、彼らが目指す「大穴」とは何なのか?
ラーンはイシェの手を握りしめた。そして、静かに呟いた。
「俺たち、これからどうなるんだろうな…」
イシェも彼の言葉に共感した。彼らの未来は不確かなものだった。しかし、彼らは共に歩む決意をしたのだ。