ビレーの賑やかな市場通りを、ラーンがイシェを引っ張るように歩を進めていた。「おい、待てよ!ちょっと落ち着いて欲しいって。」イシェはラーンの腕を振りほどき、小走りで立ち止まった。「何だ?また何か見つけたのか?」ラーンの視線は、通りを行く人々ではなく、露店の奥に並べられた奇妙な石像に釘付けになっていた。「あの石像、見たことあるような…。」ラーンは目を細めて眺めた。イシェはため息をつきながら、石像を指さした。「あれは、昨日も見てたよ。遺跡から持ち出された遺物らしいけど、何の使い道があるのかさっぱりだ。」
ラーンの顔は曇り始めた。「何のためにこんなものを作ったんだろうな…」と呟くと、イシェに肩を叩いた。「おい、イシェ、今日は俺たち、あの遺跡に挑戦するぞ!きっと大穴が見つかるって!」イシェはため息をつきながら、「またか…」と呟いた。だが、ラーンの興奮した様子を見て、思わず笑みがこぼれた。「わかったよ、行くわ。」
雑踏を縫うように歩き出す二人は、まるでいつも通りの日だった。しかし、ラーンの心には、石像が映し出した不吉な予感が残っていた。