ラーンの粗雑な斧の swing が埃を巻き上げ、薄暗い遺跡の奥底へと響き渡った。イシェは眉間に皺を寄せながら、彼を見つめた。「あの程度で何か見つかると思うのか?」と冷ややかな声で言った。ラーンは肩をすくめて、「ほら、何かあるかもってワクワクするだろ」と笑った。彼の目は、遺跡の奥深くに潜む未知なるものに輝いていた。
イシェはため息をつき、石畳の上を慎重に歩いた。足音一つ漏らさぬようにと集中し、周囲の静寂を意識していた。彼女はラーンの無計画さに辟易することも多かったが、彼の持ち前の楽観性にはどこか惹かれた。
「おい、イシェ!見てみろ!」ラーンの声が響き渡り、彼女の集中は途切れた。彼は石の壁に何かを見つけたようで、興奮気味に話しかけていた。イシェは急いで駆け寄り、彼の指さす方向を見た。そこには、壁に刻まれた複雑な模様があった。それはまるで、忘れ去られた古代文明のメッセージのようだった。
「これは…」イシェは息を呑んだ。彼女はかつて歴史書で見たことのある記号を思い浮かべた。それは、伝説の遺跡に眠るという「大穴」に関する記述だった。
「これは…もしかして…」ラーンの声も震えていた。イシェは頷き、彼の興奮を共有した。
その時、後ろから冷たい声が響いた。「なかなか良いものを見つけたようですね」
イシェとラーンが振り返ると、そこにはテルヘルが立っていた。彼女の鋭い眼光は、まるで二人の魂の奥底まで見透かそうとしているようだった。彼女はゆっくりと歩み寄り、壁に刻まれた模様を指さした。「この記号…ヴォルダンにも知られたくない情報かもしれません」と冷たく言った。
イシェはテルヘルの言葉に背筋が凍りついた。ヴォルダンが遺跡の秘密を狙っているというのは、彼女には想像もつかなかったことだった。そして、この記号が彼らにどんな危険をもたらすのか、予感させるような不吉な空気が彼女を包み込んだ。集中力を高め、テルヘルの動きに注意を払いながら、イシェは次の行動を考え始めた。