「よし、今日はあの崩れかけた塔から探すぞ！」
ラーンが剣を肩に担ぎ、いつものように目を輝かせていた。イシェはため息をつきながら彼の手伝いをする道具箱を開けた。
「またあの塔か？ 何回も言ってないけど、何も見つからないだろう」
「いやいや、今回は違う気がするんだ！ 以前、ビレーの老人から聞いた話でさ、あの塔には昔、ヴォルダンの兵士が何かを隠したって…もしかしたら、大穴のヒントが見つかるかもな！」
ラーンの言葉にイシェは苦笑するしかなかった。いつも通りの大 talk で、何も見つからない可能性の方が高いのは明らかだった。だが、ラーンの熱意と彼の仲間である自分たちへの信頼を裏切れない。
「わかった、わかった。じゃあ準備をしたら行くぞ」
イシェがそう言うと、ラーンは嬉しそうに頷き、テルヘルの方へ視線を向けた。彼女はいつも通り無表情で地図を広げていた。
「今日はあの塔ですか？」
テルヘルは静かに尋ねた。
「ああ、そいつだ」
ラーンの答えに、テルヘルはわずかに眉をひそめた。彼女はヴォルダンへの復讐のため、遺跡の探索に協力していたが、その目的とは別に、ビレー周辺の情報を集めていた。
「あの塔は、かつてヴォルダンの軍が占拠した場所だ。地元の人間は、兵士たちが何かを隠したと言っている」
テルヘルは地図を指さしながら言った。イシェが彼女の言葉に耳を傾ける一方で、ラーンはどこかそわそわしていた。
「あの…テルヘルさん、もしかして…」
ラーンの言葉が途絶えた。彼はテルヘルに何かを尋ねようとしたが、言葉が喉の奥に詰まったようだ。
「何か用か？」
テルヘルが鋭い視線でラーンを見据える。ラーンの顔は真っ赤になった。
「あの…あの塔について…もっと詳しく知りたいんだ…」
ラーンの声が小さく絞り出された。テルヘルは少しの間、彼をじっと見つめた後、地図を閉じ、立ち上がった。
「いいだろう。ビレーの図書館には古い記録が残されているかもしれない。後で一緒に見に行く」
テルヘルがそう言うと、ラーンは安堵した表情を見せた。イシェは二人の様子を静かに見ていた。テルヘルの行動には何か意味があるのか、それとも単なる偶然なのか。彼女は少し不安な気持ちを抱きつつ、３人が遺跡へ向かう準備を始めた。