ラーンが巨大な石扉を押し開けた時、埃っぽい空気が彼らを襲った。イシェは咳き込みながら懐中電灯の光を部屋の奥へ向けると、そこには金銀財宝の山があった。
「やったぜ、ラーン!大穴だ!」
ラーンの顔から興奮が溢れ出す。イシェも思わず息をのんだ。確かに、宝石や金貨の輝きは目を見張るものだった。だが、イシェの目は、財宝の奥に置かれた奇妙な石棺に釘付けになった。その表面には複雑な模様が刻まれており、不気味なオーラを放っていた。
「これは…?」
ラーンは既に財宝の山へ飛び込んでいた。「後で調べろ、イシェ!まずは全部持って帰るんだ!」
テルヘルは冷静な表情で石棺に近づき、慎重に表面の模様に触れた。その瞬間、彼女の脳裏に激しい頭痛が走った。フラッシュバックのように、戦乱の記憶と、誰かの絶叫が脳裏を駆け巡り、彼女はよろめいた。
「テルヘル、どうした?」ラーンの声がかすかに聞こえた。
彼女は必死に意識を掴み直し、石棺から手を離した。「何もない。ただの古い棺だ」
イシェは心配そうにテルヘルを見つめたが、彼女は何も言わずに石棺を背に財宝の山へと向かった。
「よし、これで十分だ!帰ろう!」
ラーンの声が響き渡った。イシェは振り返ると、テルヘルが石棺を見つめる視線を捉えた。その瞳には、恐怖と決意が交錯していた。イシェは何かを察したが、言葉にすることはできなかった。彼らは遺跡から脱出し、石棺の秘密と共に、隠蔽された真実を背負いながら、街へと戻っていくのだった。