ラーンの豪快な笑い声がビレーの狭い路地裏にこだました。イシェは眉間に皺を寄せ、通り過ぎる人々の視線を感じながらため息をついた。
「また大口叩いてるわね。あの遺跡で莫大な財宝が見つかるなんて、一体どこからそんな噂が…」
「いや、今回は違うんだって！ほら、あのテルヘルが言ってただろ？あの遺跡は昔、ヴォルダンの王家も狙ってたらしいんだぞ！」
ラーンは興奮気味にイシェの肩を叩きながら言った。イシェはテルヘルの言葉を思い出した。冷酷な微笑みを浮かべながら、「あの遺跡にはヴォルダンが最も恐れるものがある」と呟いていたのだ。
「ヴォルダンが恐れるもの…一体何だろう？」
イシェは不安を感じながらも、ラーンの熱気に押されるように、遺跡へと続く道を歩み始めた。ビレーの街から少し離れた場所にあるその遺跡は、崩れかけた石造りの門だけが寂しく残る、忘れられた場所だった。隙間風を運んできたかと思うと、寒気がイシェの背筋を走った。
「よし、準備はいいか？」
ラーンが剣を構え、イシェも小さな弓を手に取った。テルヘルは少し離れた場所で、薄暗い遺跡内部を見つめていた。その目は鋭く、まるで遺跡の中に潜む何かを探し求めているようだった。
3人は遺跡の入り口へと近づいた。石畳の上には枯れ葉が積もり、隙間から冷たい風が吹き込んできた。イシェは背中に感じる寒さと共に、どこか不気味な予感がした。
「行くぞ！」
ラーンの一声と共に、3人は遺跡へと足を踏み入れた。薄暗く、埃っぽい内部では、わずかに光が届き、石壁に影を落とすだけだった。イシェは緊張しながら周囲を見回した。
静寂の中、かすかな音だけが聞こえた。まるで、誰かが息を潜めているような、微かな音。イシェは心臓が鼓動するのを抑えきれなかった。