ビレーの喧騒を背に、ラーンは重い息を吐き出した。イシェがいつも通り眉間にしわを寄せながら地図を広げている。テルヘルは背後から二人を見下ろすように立っていた。
「よし、今日はあの遺跡だな」とラーンが言うと、イシェはため息をついた。「またあの辺り？ あれは危険だって言っただろう。あの場所には何かがいるって噂もあるんだぞ」
ラーンの笑顔は消えなかった。「大丈夫だ、俺たちにはテルヘルがいるじゃないか」
テルヘルは少しだけ口角を上げた。「確かに私はあなたの護衛になる。そして、お前たちが私の目的達成に役立つように仕向ける」
三人は森の奥深くへと足を進めた。日が暮れ始めると、周囲の木々は不気味な影を落とすようになった。イシェは不安そうに周囲を見回し、ラーンは剣を握りしめていた。テルヘルだけが静かに歩を進め、時折地図を確認する。
遺跡への入り口は崩れ落ちた石階段で、薄暗い内部に続く。イシェの顔色は青ざめていく。「ここには何かいる…感じる」
「感じない」ラーンの声が響き渡った。「俺は何も感じない。さあ行こう、大穴が待ってるぞ！」
テルヘルは二人をじっと見つめた。「覚悟しておけ。この遺跡は、お前たちが想像する以上のものを見せてくれるだろう」
彼らは遺跡の中へと足を踏み入れた。その瞬間、背後から不気味な風が吹き抜けた。ラーンは振り返ったが、何もなかった。しかし、イシェは背筋が凍りつくような感覚に襲われた。
「何か…いる…」とイシェが呟いた時、遺跡の奥底から奇妙な音が響き渡った。それはまるで、何千年もの間眠っていたものが目覚めようとしているかのような音だった。三人は互いに顔を見合わせた。そこには、隔絶された世界への入り口があった。