灼熱の太陽が容赦なく大地を焼き付けるビレーの午後。ラーンが汗だくになりながら、錆び付いたつるはしを振り下ろした。
「おい、イシェ、まだかよ!この暑さで骨まで乾きそうになるぞ!」
イシェは、ラーンの叫びにも動じず、慎重に石版の表面を撫でまわしていた。その目は鋭く、まるで石版の中に隠された何かを探っているかのようだった。
「少し待て。ここに刻印があるようだ。これは…古代ヴォルダン語か?」
イシェは眉をひそめながら、小さな羊皮紙を取り出して記号を書き留めた。「ラーン、この遺跡はヴォルダンと深い関係がある可能性が高い。注意が必要だ。」
「またヴォルダンか…」ラーンはため息をついた。「あの国とはもう縁を切りたいんだがな。」
彼らの前に広がるのは、かつて栄華を誇った王国が築いた遺跡だった。しかし、今は朽ち果てた石造りの壁と、風に吹かれて舞い散る砂埃だけが残っている。
「テルヘルはどこだ?約束の時間なのに」ラーンは不機嫌そうに言った。
イシェは静かに周囲を見回し、「彼女はいつも通り、何か企んでいるに違いない。」と呟いた。
その時、遠くから馬蹄の音が聞こえてきた。砂塵を巻き上げながら、一頭の黒馬が疾走して遺跡へと駆け寄ってきた。その背には、黒装束を身にまとったテルヘルが乗っていた。彼女は馬から降りると、ラーンたちに冷たい視線を向けた。
「遅くなったな。準備は良いか?」彼女の口調は冷酷で、まるで命令を下すかのようだった。
「何だ?また何か危険な仕事か?」ラーンの顔に不安の色が浮かんだ。
テルヘルは不気味な微笑みを浮かべながら言った。「今回は特別だ。この遺跡の奥深くには、ヴォルダン王家の秘宝が眠っているという噂がある。それを手に入れるためには、お前たちの力が必要なんだ。」
「秘宝か…」ラーンの目は輝き始めた。イシェはテルヘルの言葉に何かを感じ取ったようだが、何も言わずに黙り込んだ。
日が沈み始め、遺跡の影が長く伸びる中、三人は遺跡の中へと足を踏み入れた。
空気が重く、不気味な静けさだけが支配する遺跡内部。ラーンの足音は、まるで陽炎のように揺らぎ、イシェの視線は常に周囲を警戒していた。テルヘルは先頭を歩き、時折振り返って二人の様子を確認しながら、目的地へと向かっていた。
そしてついに、彼らは遺跡の奥深くに隠された巨大な石門の前にたどり着いた。
門には複雑な紋様が刻まれており、その中心には、まるで生きているかのように光り輝く赤い宝石が埋め込まれていた。
「これがヴォルダン王家の秘宝か…」ラーンは目を丸くした。
イシェは宝石の輝きをじっと見つめ、「何か…奇妙な気が…」と呟いた。
テルヘルは、宝石に手を伸ばし始めた。「さあ、この門を開けば、我々の運命が変わるだろう。」