ラーンが剣を抜き放つ音が、埃っぽい遺跡の奥深くで不気味に響いた。イシェは眉間に皺を寄せながら、彼の後ろから様子を伺う。「待てよ、ラーン。あの石碑には何か刻まれてるぞ。確認してから動こう。」
だがラーンの耳には入らなかった。彼の目は、遺跡の奥底に見えた金色の光に釘付けになっていた。それはまるで、彼の人生を照らす唯一の光のように輝いていた。陶然と恍惚状態に陥りながら、彼は石碑を軽々と飛び越え、その光に向かって駆け出した。
イシェはため息をつきながら後を追う。「またしても、あの男は…」
一方、テルヘルは遺跡の入り口付近で静かに待っていた。彼女はラーンたちの行動を冷静に観察し、必要な情報だけを脳裏に刻んでいた。彼女の目的は、この遺跡にあるという古代の技術を利用することだった。ヴォルダンを倒すために、あらゆる手段を尽くす決意は揺るぎないものだった。
そして、その時だった。
ラーンの剣が石碑に触れた瞬間、遺跡全体が不気味な光に包まれた。同時に、激しい振動が始まり、天井から岩が崩れ落ち始めた。「やばい！逃げろ！」イシェの叫び声が、騒音の中にかき消されていく。
テルヘルは冷静さを保ち、状況を分析した。これは単なる遺跡の崩壊ではない。何かが喚起されたのだ。そして、その力は制御不能であるように見えた。彼女はラーンとイシェの姿を探しながら、出口へと向かう。陶然とした空間に漂う、不気味な美しさ。それはまるで、世界が終わりを迎える瞬間を飾る、華麗なる花火のようだった。