ビレーの酒場「老いた竜」は、いつもより賑やかだった。遺跡探検家たちが集まり、持ち寄った酒と料理を囲んで、今日の収穫を自慢し合っていた。ラーンもイシェも、いつものようにテーブルの一隅で静かに食事をしていた。
「おい、ラーン。今日はどうだ？何か面白いもの見つけたのか？」
隣に座る大柄な男が声をかけてきた。彼はビレーの有力者の一人で、ラーンたちとは互いに協力関係にあった。ラーンは苦笑いした。「いいや、今日の収穫は乏しいよ。イシェが言う通り、最近は遺跡も枯れ果てているようだ」
イシェは小さく頷いた。最近、ビレー周辺の遺跡は、かつてのような豊かな収穫をもたらさなくなっていた。それは、大穴を求めて遺跡を荒らす者たちが増えたためだとも、噂されていた。
その時、酒場の扉が開き、テルヘルが入ってきた。彼女は黒のローブを身にまとい、鋭い眼光で周囲を見回した。「今日は特に収穫があったようだ」
テルヘルはラーンとイシェのテーブルに近づき、静かに言った。「ビレー周辺には、まだ見ぬ遺跡があるという情報を得た。大穴の可能性もある。興味があるか？」
ラーンの目は輝いた。「大穴か！もちろん、行くぞ！」
イシェは眉間にしわを寄せた。「テルヘル、そんな危険な場所に行く必要はないんじゃないのか？ビレー周辺で十分だ」
「危険と隣り合わせの場所こそ、大きな報酬が得られる場所だ」テルヘルは冷たい声で言った。「それに、この遺跡には、私たちにとって重要な情報が隠されているかもしれない。それを手に入れるために、私はどんなリスクも負う覚悟だ」
ラーンとイシェは互いに顔を見合わせた。テルヘルの言葉に、何か不吉なものを感じた。しかし、大穴への憧れと、テルヘルからの信頼から、彼らは渋々ながら彼女の誘いを断れなかった。
日が暮れる頃、ビレーの郊外にある遺跡へと向かう三人の影が伸びていた。彼らの前に広がるのは、薄暗く不気味な森だった。森の奥深く、遺跡が存在する場所には、何か陰謀が渦巻いているようだった。