ラーンの大 hammer が遺跡の壁を叩き割り、埃が舞い上がった。イシェは咳き込みながら「またあの暴発法か? 慎重にやらないと崩落するぞ!」と文句を言った。ラーンはニヤリと笑って「大丈夫だ、イシェ。俺の勘が言うんだ。ここには何かあるって」と答えた。だが、イシェの視線は彼の顔ではなく、壁際に落ちた小さな石に注がれていた。それはまるで、赤ん坊の小さな拳を握ったかのような形をしていた。
テルヘルは背後から「何か発見しましたか?」と冷たく尋ねた。ラーンの横柄な態度とは異なり、彼女は常に冷静沈着で、目の前の遺跡よりも、その背後にある何かを探しているようだった。イシェは石を拾い上げ、ひっくり返して見た。「ただの石みたいだけど…」と呟いた。しかし、その瞬間、石から微かに赤い光が漏れてきた。イシェの指先に伝わる熱さを感じた時、彼は背筋が寒くなった。
「これは…」テルヘルが石に近づき、鋭い目で観察した。「何か特別な石かもしれない」と呟いた。ラーンの顔は興奮で真っ赤になっていた。「よし!ついに大穴が見つかったのか!」と叫んだ。イシェは彼の様子を見て、どこか不安を感じた。この石の持つエネルギーは、彼らがこれまで遭遇した遺跡のものとは違っていた。まるで、何かを孕んでいるかのような、生きたような感覚があった。
テルヘルは石を手に取り、深く目を閉じた。「これは…ヴォルダンが何十年も探しているものかもしれない」と呟いた。彼女の瞳には、復讐心ではなく、どこか悲しげな影が浮かんでいた。イシェは彼女の言葉に聞き耳を立てた。ヴォルダンの過去は謎に包まれていたが、テルヘルは何かを知っているようだった。
石の光が強くなり始め、イシェは激しい痛みを感じた。まるで、自分の体の中から何かが引き裂かれるような感覚だった。彼は苦しみながら地面に倒れ込んだ。「イシェ!」ラーンの叫び声がかすかに聞こえた。意識が遠ざかる中、イシェは一つの言葉を繰り返していた。「陣痛…これは…」
石から放たれる光は、遺跡全体を赤く染め上げた。