ビレーの薄暗い酒場で、ラーンが豪快に笑っていた。「おいイシェ、見てみろ!こんなもん見つけたぞ!」テーブルの上に、錆び付いた金属製の小さな箱を置いた。イシェは眉間にしわを寄せながら箱を見た。「またそんなもの?ラーン、いつになったら大穴になるんだ?」ラーンの笑顔は少し曇った。「まぁ、でもな、この箱には何かある気がするんだ。ほら、この模様…どこかで見たことあるような…」
その時、店の入り口からテルヘルが入ってきた。黒く深いマントを身にまとい、鋭い視線で店内を見回した。「何か見つかったか?」彼女の冷たい声にラーンは慌てて箱を隠した。「あ、テルヘルさん、ちょうどいいところに。実はね…」ラーンの言葉が途切れると、テルヘルはテーブルに手をつき、低い声で言った。「私の情報では、ヴォルダン領内に『降誕の遺物』と呼ばれるものがあるらしい。古代の儀式で使われたと言われているが、その真の姿はまだ解明されていない。」
イシェは驚いてテルヘルを見た。「降誕の遺物…?」ラーンの目は輝きだした。「もしかして、あの箱に関係あるんじゃないのか?!」テルヘルはわずかに頷いた。「可能性は高い。だが、ヴォルダンはそれを手に入れるために動き出している。我々も手を動かさなければ…」ラーンは立ち上がり、拳を握りしめた。「よし、行くぞイシェ!テルヘルさん、一緒にあの遺物を奪い取ってやる!」
イシェはため息をつきながら、ラーンの後ろについていく。テルヘルの冷たい視線は、彼らを追い続けていた。三人は、ヴォルダン領内に眠る『降誕の遺物』を求めて、再び遺跡へと向かうことになる。